関節リウマチへのアダリムマブ、抗体出現で治療効果減弱

Development of Antidrug Antibodies Against Adalimumab and Association With Disease Activity and Treatment Failure During Long-term Follow-up
以下は、論文要約の抜粋です。


背景:モノクローナル抗体医薬の抗原性(抗体自身が抗原として認識され、抗体医薬と反応する抗体が患者体内で産生されること)についての短期間の研究データは、このような抗抗体医薬抗体の産生が、血中抗体医薬レベルの低下および治療反応性の低下と関連することを示している。しかし、抗抗体医薬抗体の臨床的意義について長期間フォローアップした例はない。

目的:関節リウマチ(RA)患者における、完全ヒト化モノクローナル抗体アダリムマブ(adalimumab)に対する抗体産生とその臨床的意義について、3年間のフォローアップを行う。

方法:外来でアダリムマブを投与された関節リウマチ患者272例を対象とする前向きコホート研究を行った。病状は血清サンプルによってモニターした。血清中のアダリムマブ濃度と抗アダリムマブ抗体価はフォローアップ後に測定した。抗アダリムマブ抗体が出現した患者としない患者の間で、治療の中止、低疾患活動性(minimal disease activity)、臨床的寛解を比較した。

結果:3年後、抗アダリムマブ抗体が出現した患者は272例中76例(28%)で、これらの中51例で治療開始後28週以内で抗体が出現した。抗アダリムマブ抗体が出現しなかった患者では血清中アダリムマブ濃度が高かったが、抗体が出現した患者した患者では血清中アダリムマブ濃度が低く治療失敗による投与中止率が高かった。また、抗体が出現しなかった患者では196例中95例(48%)が低疾患活動性が維持されたが、抗体が出現した患者では76例中10例(13%)しか低疾患活動性が維持されなかった。寛解達成率も出現しない場合は67例(34%)だったが、抗体が出現した場合は3例(4%)のみだった。

結論:抗アダリムマブ抗体の出現は、血清中アダリムマブ濃度の低下と関連し、低疾患活動性の維持や寛解の達成を困難にする。


アダリムマブ(ヒュミラ®、ヒューミラと書く場合もある)は、完全ヒト型抗TNFαモノクローナル抗体製剤で、2008年4月に関節リウマチ(RA)を対象に国内承認されました。

現在、TNF阻害薬としてはインフリキシマブ(レミケード®)、エタネルセプト(エンブレル®)、アダリムマブの3種が使用可能です。エタネルセプトは可溶性TNF受容体ですので少し機序が異なりますが、インフリキシマブとアダリムマブはTNFαと反応する中和抗体です。

アダリムマブは、抗体成分である蛋白配列が完全ヒト由来であるため、先行のキメラ抗体製剤、インフリキシマブよりも理論的に生体適合性が高い(抗体産生による過敏症を起こしにくい)とされていました。今回の報告は、完全ヒト化抗体でもやはり3割近い患者に抗体が出現し、その出現は効力低下と強く関連することを示唆しています。

クローン病患者にインフリキシマブを使用した例では、10ヶ月以内に61%の患者で抗体が出現したそうです(論文をみる)ので、抗体の出現率では完全ヒト化抗体の方が低いですが、それでも大きな問題であることは間違いないです。

抗体医薬だけではなく、エタネルセプトなどの生物医薬でも抗体出現の問題は重要です。今後は、多くの生物製剤について、この論文のように抗体出現と治療効果の減弱をフォローアップする必要があると思われます。

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