「COVID-19の拡大は空気感染が主流」国立病院機構仙台医療センター・西村秀一氏が講演

「COVID-19の拡大は空気感染が主流」【第61回臨床ウイルス学会】国立病院機構仙台医療センター・西村秀一氏が講演
以下は、記事の抜粋です。


仙台医療センターの西村秀一氏は10月3日、ウェブ開催となった第61回日本臨床ウイルス学会学術集会のシンポジウムで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の伝播様式について講演。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染経路は空気を媒介したものが主流である」と述べ、マスクや換気といった空気感染への対策に重きを置かなければ、感染拡大は今後も続くだろうと語った。

「接触感染」ではクラスターは発生しない
西村氏はまず、接触感染について解説。接触感染における経路は、眼粘膜からの感染、経口感染、鼻粘膜からの感染に分けられるが、その中で大きな割合を占めるのは鼻粘膜からの感染である。しかし、実生活で鼻を触る場合、ほとんどは(粘膜ではない)鼻前庭部にとどまるため、鼻粘膜からの感染はほぼ発生しないと指摘。実際、これまでに接触感染でCOVID-19を発症したという直接的な証拠はなく、また、接触感染によって多くの人が同時に感染する(クラスターが発生する)こともあり得ないと説明した。

「実際、ドアノブにウイルス液を吹き付け、乾燥した後に触れても、ごく微量のウイルスしか指に移りません。また、一般環境での生きたコロナウイルスの存在は証明されていません」

空気感染がクラスター発生の「本丸」
エアロゾルに関しては、液滴の径が5μm程度では沈降速度は1mm/秒、10μm程度では3mm/秒と遅く、また、風に舞うと沈降しなくなるため、長期間空中に浮遊する。また、このような粒子状態であれば、SARS-CoV-2は3時間程度、活性を保ち続けることが実験で示されているため、感染者と同じ室内にいた場合、エアロゾルを吸うことで容易に空気感染を起こしてしまう可能性があると指摘した。

世界保健機関(WHO)は「換気の悪い環境での空気感染の可能性」について言及した。また、9月18日、米疾病対策センター(CDC)もCOVID-19は空気を介して感染し得ることを認め、ガイドラインに「エアロゾルによる経路が主な感染ルートであり、接触感染は主要ルートではない」と掲載した。この文章は4日後、「素案が誤って掲載された」と取り下げられたものの、CDCにも空気感染を認める動きがあることが確認された(編集部注:講演後の10月5日、CDCはガイドラインを更新し、空気感染によって広がることを一部認めた)。

一方、日本政府の新型コロナウイルス対策分科会は7月末、「マイクロ飛沫感染」という言葉を新たに作り、あくまで空気感染とは異なると強調した。「飛沫粒子の大きさで分類することに意味はなく、以前から存在する『空気感染』もしくは『エアロゾル感染』という言葉を使用するべきだと考える。定義のあいまいな『マイクロ飛沫感染』という造語は非科学的である」と苦言を呈した。

最後に西村氏は、「COVID-19の感染経路は空気感染が主流であるため、感染管理において、接触感染を防ぐ手洗いのみに重きを置いた場合、院内感染が今後も続くだろう」と改めて強調し、3密をはじめとした空気感染対策の重要性について語り、講演を締めくくった。


これまでクラスターが発生した多くの事例を考えると「空気感染」あるいは「エアロゾル感染」が原因とする推論は正しいと思います。アルコールや次亜塩素酸ナトリウムを含む液でそこら中を拭き回るよりも、十分に換気する方がクラスター発生予防には効果的のようです。

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