前立腺がん骨転移治療でのDenosumab(抗RANKLヒトモノクロ抗体)とゾレドロン酸の比較

Denosumab versus zoledronic acid for treatment of bone metastases in men with castration-resistant prostate cancer: a randomised, double-blind study
以下は、論文要約の抜粋です。


背景:進行性前立腺がん患者における骨転移は重要な問題である。我々は、骨転移のある去勢抵抗性前立腺がん患者における、Denosumab(抗RANKLヒトモノクローナル抗体)の骨格関連イベント予防効果をゾレドロン酸の効果と比較した。

方法:39カ国の342施設において、以前にビスホスホネートの静脈内投与を受けたことがない去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とする第3相試験を行った。患者をランダムに2群に分け、denosumab(120mg、皮下)+ 静脈内プラセボ、あるいはゾレドロン酸(4mg、静脈内)+ 皮下プラセボを、4週間ごとに投与した。主要エンドポイントは、最初の骨格関連イベント(病的骨折、放射線治療、骨の外科的処置、脊髄圧迫)発生までの時間とし、判定は非劣性とした。

結果:1904名の患者を950例のdenosumab群と951例のゾレドロン酸群に分けた。最初の骨格関連イベントまでの時期は、denosumab群が20.7ヶ月、ゾレドロン群が17.1ヶ月で、denosumab群が有意に優れていた。副作用は2群で差は認められなかったが、低カルシウム血症はdenosumab群に13%、ゾレドロン酸群では6%に認められた。

解釈:骨格関連イベントの予防においては、denosumabはゾレドロン酸よりも優れており、去勢抵抗性前立腺がん患者の骨転移治療における新しい治療選択肢となる可能性がある。


前立腺がんは進行すると骨に転移しやすいがんです。前立腺自体の症状ではなく、腰痛などで骨の検査をうけ、前立腺がんが発見されることもあります。骨転移を起こすと、痛み、骨折、高カルシウム血症などの問題が生じます。前立腺がんの骨転移で認められるこのような骨破壊は、破骨細胞の活動性が過度に亢進するためだと考えられています。

RANKL(NF-κB活性化受容体リガンド、receptor activator of NF-κB ligand)は、TNFリガンドファミリーに属する膜結合型サイトカインで、破骨細胞の生成、機能、生存を促進します。Denosumabは、抗RANKLヒトモノクロ抗体です(関連記事をみる)。

ゾレドロン酸などのビスホスホネートも破骨細胞の機能を抑制し、前立腺がんの骨転移に伴う諸問題を軽減するために、現在使用されていますが、腎臓に対する副作用があるので、治療中は定期的な腎機能検査が必要です。また、進行性の前立腺がん患者では、尿道閉鎖などによって腎機能が傷害されていることも多いので、ゾレドロン酸が使えない症例も存在します。このような場合、Denosumabが新しい選択肢となる可能性が出てきました。

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