以下は、記事の抜粋です。
大相撲力士らによる八百長問題で、日本相撲協会の「八百長アンケート」に、親方や力士らの間で不満が高まっている。昨夏の野球賭博事件の際に実施した同様のアンケートで、正直に回答した者がペナルティーを受けた経緯があるからだ。多くの親方からは「(新たな事実は)何も出るはずがない」との声も漏れている。
今回のアンケートは、八百長問題で名前が出ている14人のほかに汚染が拡大していないかを調べるのが目的。記名式で、「八百長を見聞きしたことがあるか」「やったことがあるか」「持ちかけられたことがあるか」などについて約900人の協会員全員に尋ねている。回答にうそがあった場合は処分対象になる、とのただし書きもある。
だが、実施を決めた「特別調査委員会」の伊藤滋座長(早大特命教授)自身が、記者会見で「(正直に記入しない可能性が)ある」と語るように、実効性は怪しい。
理由は、昨年6月に実施した野球賭博に関する自己申告。当初は賭博をやったと申告しても処分はしないとしていたが、文部科学省などの批判で方針を一転。集計結果を警察に提出し、「賭博をやった」と回答した親方、力士らの実名を公表。最終的に大量の謹慎者を出した。これが、協会員には「正直者がバカをみた」と映る。
このアンケートを「八百長アンケート」と書いた記者のセンスに敬意を表します。同じアンケートを扱ったスポニチの「お粗末…アンケートはウソだらけの紙切れ?」では、以下のような「ある若手親方」や「ベテラン関取」の話が紹介されています。
八百長が行われていることを見聞きしたことがあるかなどの問いに「ある」「ない」の二択で答え、「ある」と答えた場合は時期や回数、相手、仲介者、金銭授受の有無と金額などを記入する形式。だが、アンケートは2月3日に配布されて4日に回収されたため、ある若手親方は「関与を認めれば呼び出されて厳罰処分を受ける。本当のことなんか誰も書くわけがない。こんな大事なものを2日間で出させることもおかしい」と正直に報告する気持ちが全くない姿勢を見せた。
記名式という点が障害となる可能性もあり、この親方は設問全て「ない」に○をつけたという。また、40代の親方は「協会に利用されるのは、もうたくさん。正直者が墓穴を掘る」。ベテラン関取は「仮に八百長があると書いても立証するのは極めて困難。アンケートにはあまり意味がない」と話した。
日本相撲協会は、3月13日から大阪府立体育館で開催される予定だった春場所を中止しました。
場所の中止という「重大な結果が発生した」責任や八百長スキャンダルによる「協会の社会的信用の毀損」などの責任を、現時点で”黒”とわかっている3人とその他数名に押し付けて厳重処分し、「社会から信頼される大相撲となることができるよう、全協会を挙げて改善に努めます。 皆様のご理解とご支援をなにとぞよろしくお願い申し上げます。」みたいな理事長声明を出して、「早期正常化」をめざすのでしょうか?
私は、「八百長ずもう」をやった力士が糾弾されるのであれば、「八百長アンケート」をやった相撲協会はもっと糾弾されるべきだと思います。本当に実態を知りたいのであれば、どんな回答をしても個人が責任を問われることはないとした上で、無記名のアンケートを実施するべきでしょう。「八百長アンケート」はその気がない証です。
今回のアンケートは、「本当のことを書いたら大変なことになるぞ」という圧力をかけながら記名回答させることで、全員がスポニチ記事の若手親方のように「ない」に○をつけることを期待したものです。スポニチの「ウソだらけの紙切れ」という表現がピッタリです。実際、協会員アンケート979人全員が八百長を否定したそうです(関連記事をみる)。
外国人が横綱にまで出世できる組織でさえ、このような八百長アンケートを行えば皆が”白”と答えるのですから、部局の長がいろいろな特権を与えたり奪ったりできる組織では、このような八百長アンケートはやるだけ無駄なだけではなく、やること自体がインモラルです。このようなアンケートの調査結果に基づき、「他の力士には、問題がなかったことを確認した。」などと主張するような組織を文部科学省が支援するのは誤りです。
関連記事
協会員アンケート979人全員が八百長否定
コメント