驚くべき変異。サルモネラ菌が植物に感染する能力を獲得したことが判明
以下は、記事の抜粋です。
食中毒は私たちの身近にある脅威だ。特に卵や食肉などを介した「サルモネラ菌」は、日本では食中毒の1~3割の原因であるとされる。本来は動物の消化管に常在する腸内細菌なのが、その一部が植物に感染する能力を獲得してしまったそうだ。
そのサルモネラ菌はレタスやほうれん草の防衛メカニズムを潜り抜け、「気孔」という植物が呼吸や水分を放出するために使う孔から葉の内部に滑り込む。そうして、水洗いしても化学処理をしても除去することができないという。
デラウェア大学(アメリカ)のハーシュ・バイス氏らの研究では、ほうれん草とレタスの気孔がサルモネラ菌・リステリア菌・大腸菌にどのように反応するのか調べたところ、どの菌も痕跡を残さずそれらに感染できることが分かった。
人間の病原菌が植物の病原菌と同じようなことを試みているわけで、私たちの食の安全という点でも油断ならない事態だろう。バイス氏らによると、収穫高が高まるよう繁殖されてきた作物は、その免疫系を犠牲にしているのだという。葉の内部に侵入してしまった細菌は、水で洗ったり、化学的な処理を施しても取り除くことはできないという。
元論文のタイトルは、”Evasion of Plant Innate Defense Response by Salmonella on Lettuce(レタスにおけるサルモネラ菌による植物の自然防衛反応の回避)”です(論文をみる)。
たしかに、レタスの中にサルモネラ菌がいて、洗剤で洗っても除けないというのは恐怖です。記事には書かれていませんが、ある種の枯草菌(B. subtilis UD1022)がサルモネラ菌の侵入と持続を防ぐようです。「菌をもって菌を制す」ことが可能かもしれません。
この論文では実験的にレタスに付着させたサルモネラ菌がある条件でレタスに侵入し生存し続けたというだけで、実際に収穫されたレタスにヒトに感染できる量のサルモネラ菌がみつかったというわけではないので、それほど心配する必要はないと思います。
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