クロストリジウム属の常在腸内細菌による制御性T細胞(Treg細胞)の誘導

免疫制御細胞を増やす細菌=大腸で発見、治療応用期待-東大など

以下は、記事の抜粋です。


マウスの大腸に生息する多様な腸内細菌のうち、マウスの過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を増やす働きがある細菌が特定された。東京大学やヤクルト中央研究所などの研究チームが12月23日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。

この「クロストリジウム属」の細菌は人間の大腸にも存在するとみられ、制御性T細胞を増やすことにより、過剰な免疫反応によって起きる炎症性腸疾患やアレルギー反応を予防、治療できる可能性があるという。

本田准教授らは、無菌マウスの大腸では制御性T細胞が非常に少ないことを発見。マウスに存在する約600種の腸内細菌を調べ、クロストリジウム属の細菌を無菌マウスに投与すると、大腸の制御性T細胞の数が通常に戻ることを突き止めた。

大腸にこの細菌が多いマウスは炎症性腸炎やアレルギー反応を起こしにくいことも判明。人間の潰瘍性大腸炎の患者ではこの細菌が減少しているとの研究報告もあるという。


元論文のタイトルは、”Induction of Colonic Regulatory T Cells by Indigenous Clostridium Species”です(論文をみる)。
「制御性T細胞」(Regulatory T cells, Tregs)は、免疫システムの過剰応答を抑制する役割を持つT細胞の一種で、自己免疫疾患において重要だと考えられています。

研究者らは、Tregsが大腸粘膜に最も多く分布することを発見しました。次に、マウスの大腸から細菌をすべて除去すると、大腸内のTregs数が激減することを発見しました。そして記事にも書かれていますが、この無菌マウスにクロストリジウム属の菌株の混合物を投与すると、大腸のTregs数が回復することを確認しました。

さらに、コンベンショナルに育てられた(無菌でない)野生型マウスにクロストリジウム属の菌を与えると、Tregsが増え、自己免疫性大腸炎やアレルギー反応に抵抗性を示すことも発見しました。

研究者らのアプローチでおもしろいと思ったのは、多くの腸内細菌から候補を探すために、スペクトルの異なる抗生物質を用いたことです。バンコマイシンを投与するとTregsが減少することから対象をグラム陽性菌に絞ることができました。

一方、他の報告ではTregsはがん細胞に対する免疫も抑制するとされています(記事をみる)。クロストリジウム菌投与で発がんが誘導されるということはないでしょうか?いずれにしても、臨床的な応用がどうなるかが楽しみです。

自己免疫疾患とがんにおけるTregsの役割(Qiagenのサイトより)

コメント

タイトルとURLをコピーしました