Uncoupling the dopamine D1-D2 receptor complex exerts antidepressant-like effects
以下は、論文要約の抜粋です。
うつ病患者の死後脳を解析した結果、ドーパミンD1受容体とD2受容体の間のカップリングが著しく増加していた。
生化学的解析によって、D1受容体とD2受容体は直接的なタンパク質-タンパク質相互作用を介するヘテロ2量体を形成することが明らかになった。
ラットにD1-D2受容体複合体形成を阻害するペプチドを投与すると、自発活動に影響することなく、強制水泳後のラットの不動性を減少させた。さらに別の抗うつ作用のテストでも効果があった。
D1受容体とD2受容体のカップリングは、D2受容体の特異抗体で免疫沈降し、沈降物中のD1受容体量をイムノブロットで測定しています。うつ病患者の死後脳では健常者と比べると抗D2受容体抗体によって免疫沈降するD1受容体の量が有意に増加していたそうです。
次に、D2受容体のどの部分がD1受容体との結合に関与するかを調べ、その部分に相当するペプチド(D2LIL3-29-2)を合成し、細胞内に入るようにHIVウィルスのTatタンパク質と融合させたものを作りました。このTat-D2LIL3-29-2がD1受容体とD2受容体のカップリングを試験管内で阻害することを確認しました。
さらに、この融合タンパク質Tat-D2LIL3-29-2をラットの前頭前野に注入したところ、強制水泳後の不動などのラットうつ病モデルを抗うつ薬のイミプラミンと同程度に改善したということです。
受容体複合体の形成を阻害しても、D1、D2受容体のドーパミンシグナル伝達機能は必ずしも変化しないので、このタンパク質間相互作用を治療の標的とすれば、優れた抗うつ薬ができる可能性があるという話です。
なかなかユニークな話だと思いますが、経口投与で脳内移行するD1-D2カップリング阻害薬ができてみないとなんとも言えないです。また、1.カップリングを決める因子は何か?2.うつ病は主に中年の病気だが、何歳ぐらいからカップリング異常がおこるのか?3.従来の抗うつ薬の作用機序との関連は?などなど疑問はつきないです。
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