自己核酸によるToll様受容体刺激がSLE患者のグルココルチコイド感受性を低下させる。

TLR recognition of self nucleic acids hampers glucocorticoid activity in lupus

以下は、論文要約の抜粋です。


グルココルチコイドは、SLEなどの自己免疫疾患患者の治療に広く使われている。しかし、他の自己免疫疾患に用いられる投薬法では、大部分のSLE患者の病気をコントロールすることは難しく、病気の活動を一時的に低下させるために、高用量メチルプレドニゾロンのパルス療法などのより過激な治療が行われている。

グルココルチコイドの抗炎症作用の主なメカニズムは、NF-κB阻害だと考えられている。B細胞や形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cells、PDC)上のToll様受容体であるTLR7やTLR9による自己核酸の認識は、SLEの発症機序における重要なステップである。自己核酸がTLR7やTLR9を刺激すると、抗核抗体やI型インターフェロン(IFN)の産生が促進されるが、これら2つの因子はSLEの重症度と相関する。

自己核酸を含む免疫複合体によって活性化された後、PDCはさまざまな組織へ遊走する。研究者らは、SLE患者や2種類のSLEモデルマウスにおいて、グルココルチコイドによるIFN経路阻害活性が低下している理由が、PDCがTLR7やTLR9を介して刺激されているためであることを、in vitroとin vivoの実験により証明した。

TLR7やTLR9を介して、核酸を含む免疫複合体や合成リガンドによりPDCが刺激されると、PDCの生存に必須であるNF-κB経路が活性化される。その結果、グルココルチコイドを投与しても、PDCにおけるNF-κB活性は高いままで、PDC細胞死の誘導とそれに伴う全身でのIFN-αレベルの低下がおこらない。

これらの結果は、Toll様受容体による自己核酸認識の新しい役割を明らかにし、TLR7やTLR9を介するシグナル伝達の阻害薬がステロイド剤の減量に効果的である可能性を示している。


グルココルチコイドは、獲得免疫と自然免疫の両方に働いて強力な抗炎症作用を示します。その作用には、B細胞とT細胞の反応抑制、単球と好中球のエフェクター機能抑制などがあります。細胞レベルでは、NF-κB活性を抑制することが、グルココルチコイドが示す抗炎症効果の中心メカニズムだと考えられています。

SLE (systemic lupus erythematosus)は、内因性の核酸によって自然免疫系が慢性的に刺激されていることを特徴とする自己免疫疾患です。SLEの治療には、他の自己免疫疾患治療に用いられるよりも高用量のグルココルチコイドが必要で、多くの副作用をおこすことが知られていますが、なぜこのような高用量が必要であるかは不明でした。

本論文は、このPDCに存在するToll様受容体の自己核酸による刺激が、SLE患者におけるグルココルチコイド感受性低下の原因であると結論しています。

研究者らは、TLR7とTLR9を介するシグナル伝達の阻害剤として、IRS 954(5′-TGCTCCTGGAGGGGTTGT-3’の配列をもつオリゴヌクレオチド)を用いています。グルココルチコイドの副作用軽減のためにも、新規Toll様受容体阻害薬の登場が待たれます。

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