1型糖尿病の発症を遅らせる薬、「テプリズマブ(商品名:Tzield)」

1型糖尿病の発症を遅らせる薬を開発 米FDAが承認 1型糖尿病そのものの新たな治療法として期待
以下は、記事の抜粋です。


1型糖尿病の発症を遅らせる作用のある新しい免疫療法薬が、世界ではじめて承認された。免疫療法は、「1型糖尿病の症状ではなく、病気そのものを治療する新しい治療法」として期待されている。

米国食品医薬品局(FDA)は11月17日、1型糖尿病の発症を遅らせる作用のある新しい免疫療法薬「テプリズマブ(teplizumab、商品名:Tzield)」を承認した。

1型糖尿病は、主に自己免疫により、インスリンを産生するβ細胞が破壊され、血糖を下げるインスリンの分泌が失われることで発症すると考えられている。世界で1型糖尿病とともに生きる人の数は約900万人。1型糖尿病は、糖尿病の95%を占める2型糖尿病とは、発症要因や治療の考え方はまったく異なる。2型糖尿病は、体質などの遺伝的な要因と環境的な要因(過食や運動不足などの生活習慣、肥満、加齢など)が合わさり、インスリン分泌の低下やインスリンの働きが悪くなることで発症するが、1型糖尿病はどちらも関係がない。

2002年にNew England Journal of Medicienに発表された最初の成果は、1型糖尿病を発症したばかりの患者を対象としたもので、すべての膵島が破壊される前に抗CD3モノクローナル抗体である「テプリズマブ」を投与することで、1型糖尿病の進行を予防・改善できることが示された。全国で実施した臨床試験では、「テプリズマブ」を14日間、単回投与することで、1型糖尿病の発症リスクの高い小児や成人の患者で、1型糖尿病の発症が平均2年間遅延することが示された。

1型糖尿病の治療を促進する研究を支援する活動を世界的に展開しているJDRFは、「テプリズマブ」の基礎研究がはじまった20年以上前から開発を支援しており、臨床試験にも協力している。JDRFは、かつては「若年性糖尿病研究財団」と呼ばれていたが、1型糖尿病が子供だけでなく成人が発症することも多いことが分かってきたことから、すべての1型糖尿病の人が健康を維持しながら長生きできる社会の実現を目指し、名称を「JDRF」に変更した。

「1型糖尿病のバイオマーカーをもち、発症リスクが高いと判定された人で、糖尿病の発症を遅らせることで、負担を減らせ、眼・腎臓・神経・心臓病などに起こる合併症のリスクを軽減できるようになります」と、JDRFの最高科学責任者であるサンジョイ ドゥッタ氏は言う。

1型糖尿病の研究に携わる医師と科学者による国際ネットワークである「TrialNet」では、過去20年間で、1型糖尿病患者の20万人以上の親族からデータを収集してきた。これにより、自己免疫疾患を発症し、1型糖尿病の発症に進展する可能性の高い人を特定することができるようになっているという。1型糖尿病の新たな診断は、米国だけでも毎年6万4,000人に上る。

小児科医のコーリー ワート氏の娘であるクレア ワートさんは、1型糖尿病のバイオマーカーがあり発症リスクが高いと7年前に判定された。「テプリズマブ」の臨床試験に参加し、2022年11月の時点で1型糖尿病を発症していないという。「これは、1型糖尿病の症状ではなく、病気そのものを治療する治療法になると期待しています」と、ワート氏は言う。

「テプリズマブ」の安全性と有効性を検証した試験には、1型糖尿病のリスクが高いと判定された76人が参加した。自己抗体が出現し、血糖異常が生じはじめているが、1型糖尿病の診断はまだ受けていないハイリスク者だった。参加者は、無作為にテプリズマブ群(44人)とプラセボ群(32人)に分けられ、1日1回、14日間にわたり静脈内投与を受けた。

その結果、中央値51ヵ月の追跡期間に、テプリズマブ群の45%、プラセボ群の72%が1型糖尿病と診断されたが、診断されるまでの期間の中央値は、テプリズマブ群が50ヵ月、プラセボ群は25ヵ月で、テプリズマブは1型糖尿病の発症をおよそ2年間遅らせることが示された。頻度の高い副作用としては、白血球レベルの低下、発疹、頭痛などが報告されたという。なお、同剤はFDAによる承認に際して、ブレークスルーセラピーの指定を受け優先審査を受けていた。


この記事を読むと、やはり1型糖尿病は子供に多いのかという印象をうけますが、成人での発症も多く、私がこれまで出会った10人前後の1型の患者さんの大半は30~50台で発症した方ばかりです。発症当初は2型糖尿病として治療される場合も多いようです。急激な体重減少が認められる場合は、1型が強く疑われますので、「若年性」という考えは排除すべきです。

テプリズマブは抗体医薬なのでおそらく高額ですが、日本でも承認されることを願います。

説明動画もあります。

 

 

 

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