OAB治療薬ミラベグロンを承認申請―アステラス製薬
以下は、記事の抜粋です。
アステラス製薬は6月18日、過活動膀胱(OAB)治療薬ミラベグロンについて、OABにおける尿意切迫感、頻尿および切迫性尿失禁を効能・効果として厚生労働省に承認申請したと発表した。
ミラベグロンは、アステラス製薬によって創製・開発された1日1回経口投与のβ3アドレナリン受容体作動薬。膀胱平滑筋に存在するβ3アドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させて尿をためる機能を高める。
国内で実施したフェーズ3試験では、OABの標準治療薬とされている抗コリン剤に特有の副作用である口内乾燥の発現率がプラセボ群と同等だったという。
同社の既存のOAB治療薬ベシケアは、1日1回経口投与の抗コリン剤。膀胱の筋肉の収縮に関係するアセチルコリンの働きを妨げることで、膀胱の尿を出そうとする働きを弱める。昨年度の全世界での売上高は、823億円(うち国内229億円)。
同社は、今年度から5年間の中期経営計画の中で、ミラベグロンを「成長ドライバー」と位置付けており、ベシケアと併せてグローバルOAB市場でナンバー1ポジションの獲得を目指すとしている。欧米では今年度後半の承認申請を予定している。
OABは、尿意切迫感を必須症状とし、頻尿や切迫性尿失禁などの症状を伴う機能障害。同社によると、日本では40歳以上の男女の8人に1人(約810万人)が潜在患者と推定されている。
過活動膀胱(overactive bladder:OAB)は、比較的新しい疾患概念です。ガイドラインでは、「尿意切迫感を有し、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあれば伴わないこともある状態」と定義されています。
ところで、薬理学の教科書をみても、β3アドレナリン受容体について詳しく書かれているものは少ないです。例えば、三木先生の電子教科書では、「組織:脂肪細胞、作用:脂肪分解促進」とだけ書かれています。β3受容体について少し説明します。
β3受容体は、約20年前に発見されました。発見当初からしばらくは、脂肪組織に多く分布することや、64番目のトリプトファンがアルギニンに換わった変異が、肥満や糖尿病に関連することから、β3受容体アゴニストは、肥満や糖尿病、糖尿病発症の優れた治療薬になる可能性があるとして注目されました。実際、多くの薬物が「やせ薬」として開発されましたが、すべて失敗に終わったそうです。
ところが、1998年頃からの日本人を中心とした研究によって、ヒト膀胱平滑筋のβ受容体の97%がβ3であること、ヒト膀胱の弛緩がβ1やβ2ではなくβ3を介すること、ラットモデルで膀胱過活動が選択的β3アゴニストによって抑制されることなどが示され、OABに有効である可能性が示されました(ミラベグロンの論文をよむ)。
ベシケア(一般名、ソリフェナシン)は、ムスカリン受容体阻害薬なので、口渇、便秘、尿閉などの副作用がありますが、ミラベグロンにはなさそうです。まだ承認申請されたばかりですが、投薬対象人口を考えると、OABに対するβ3受容体アゴニストの使用が急速に普及しそうな気がします。
アセチルコリンは排尿筋収縮、(ノル)アドレナリンは弛緩の方向に働きます。
コメント
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ミラベグロンたまに出ます
患者さんの印象いかがですか?
副作用とか特にありますか?
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>コテツさん
コメントありがとうございます。ミラベグロン(ベタニス®)の副作用では、血圧の上昇が報告されています。コテツさんの印象はどうでしょうか?
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>takさん
副作用はあまり聞きませんが、効く方と効かないかたはっきりしてますね
それは抗コリンも同じですが
抗コリンは脱落も多いですがミラベグロンは少ないですかね
抗コリンとミラベグロンの併用ケースってありますか?
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>コテツさん
http://blogs.yahoo.co.jp/ebisudani2000/6749340.htmlに以下のような記載がありました。
心拍数の変動や高心拍数は生命予後に関連する。Lancet1998,351:478。EUr Heart J7,279.1986
ミラベグロンは選択的β3作動薬であるが、用量が増加するとβ1β2に対する作用が出てくる。
ムスカリン(M2)受容体の遮断作用を有するプロピレリン・トルテロジンなどの非選択的抗コリン薬との併用は心拍数をより上昇させる可能性がある。機序から考えればこれ以外の薬物が良いと考える。
メーカーからは現在併用は推奨されていない。
これをみると、併用は勧められないと思います。