Effect of accelerated rehabilitation on function after ankle sprain: randomised controlled trial
昔から、足首を捻挫(ねんざ)した直後は安静にするのが良いと言われていましたが、そうではないというランダム化試験の結果が発表されました。以下は、論文要約の抜粋です。
目的
急性足関節(足首)捻挫後、初期からの治療的運動療法を含む加速的治療介入と、安静、氷冷、圧迫、挙上という現在の標準的治療介入を比較する。
デザイン
ブラインド化された評価者によるランダム化対照臨床試験
場所
事故・救急部門と大学のスポーツ外傷クリニック
参加者
1度または2度(下で説明)の急性足関節(足首)捻挫を発症した101人
治療介入
患者は、ランダム化されて早期から治療的運動を伴った加速的治療介入をうけるグループ(運動グループ)と安静、氷冷、圧迫、高挙という標準的治療介入をうけるグループ(標準グループ)に分けられた。
治療成績評価
第1評価は、主観的な足関節(足首)機能(下肢機能スケールによる)。第2評価は、安静時と運動時の疼痛の有無、しゅ脹、治療開始前と外傷後1,2,3,4週間における身体活動能力。そして、第16週における足首の機能と再外傷率の評価。
結果
全体としての治療効果は運動グループの方が優れていた(P=0.0077)。これは、第1週でも2週でも有意だった。身体活動能力は、歩行時間、1日あたりの歩数などで運動グループが有意に高かった。安静時と運動時の疼痛やしゅ脹は両グループで変らなかった。
結論
足首捻挫直後(第1週)からの治療的運動療法を含む加速的治療介入は足首機能を改善する。すなわち、この治療介入をうけたグループは標準治療をうけたグループよりも活動的だった。
関節が不自然な外力により生理的な可動範囲を超える動きをした時に生じる、代表的な外傷が捻挫です。関節を構成している相互の骨と骨の間にずれのないものを捻挫とよびます(ずれがあるものは脱臼)。
捻挫を最も起こしやすい関節が足首の足関節です。捻挫の重傷度を左右するのは、靭帯の損傷の程度です。靭帯は、関節がずれないように骨と骨とをつなぎ止め、関節の動きをコントロールする組織です。
これまで、足首の捻挫の応急処置は「RICE」と覚えていました。「Rest=安静」「Icing=冷却」「Compression=圧迫」「Elevation=高挙」です。本論文では、足首の捻挫でも、靭帯が完全に断裂しない1度と2度の場合は、安静ではなく早期から適切なリハビリ運動を行うべきであると結論しています。
ブラインド化された評価者によるランダム化対照臨床試験の結果ですので、間違いはなさそうです。「Icing=冷却」「Compression=圧迫」「Exercise=運動」で「ICE」に変わるのでしょうか?
具体的には、最初の1週間は、10分間の氷冷としゅ脹に対する圧迫を10分間の休憩をはさんで2回行う、これを1日に3回くり返す氷冷・圧迫治療をうけます。これは、今までの治療と同じです。
リハビリ運動では、筋力強化などを中心としたいろいろのメニューが用意されています(リハビリ運動をみる)。
足関節(足首)の靱帯。本論文は、靭帯が伸びる(1度)か一部が切れる(2度)捻挫が対象です。完全に断裂したもの(3度)は対象外です。
コメント