糖尿病治療薬「スルホニル尿素剤」の第2の標的、Epac2

The cAMP Sensor Epac2 Is a Direct Target of Antidiabetic Sulfonylurea Drugs (cAMPセンサーであるEpac2は抗糖尿病スルホニル尿素薬の直接標的である)

以下は、論文の要約です。


低分子量GTP結合タンパク質Rap1のGEF(グアニンヌクレオチド交換因子)であるEpac2はcAMPによって活性化される。

Fluorescence resonance energy transfer (FRET)解析と結合実験によって、広く2型糖尿病の治療に使用されているスルホニル尿素(SU)薬は、Epac2と直接相互作用することを明らかにした。

SU薬は、特異的にEpac2を介してRap1を活性化する。Epac2ノックアウトマウスでは、SU薬によるインスリン分泌が減少し、SU薬トルブタマイドによる血糖降下作用も減弱した。

このようにEpac2は、SU薬によるインスリン分泌の促進に貢献している。Epac2は、インスリン分泌を増強する消化管ホルモン、インクレチンの作用にも必要なので、魅力的な糖尿病治療薬標的分子かもしれない。


スルホニル尿素(SU)薬は、2型糖尿病に対して最も良く用いられる経口薬で、膵β細胞からの内因性インスリンの放出を誘導します。

これまで知られていたSU薬の作用メカニズムは、ATP感受性カリウムイオン(KATP)チャネルの制御サブユニットであるスルホニル尿素受容体に作用し、K+チャネルを閉鎖させるというものです。

K+チャネルの閉鎖により細胞が脱分極し、電位依存性Ca2+チャネルが開いて細胞外からCa2+が流入し、細胞内Ca2+濃度が上昇、インスリンの開口分泌が促されます。これも約15年前に清野先生らが明らかにしたもので、広く認められ教科書にも書かれています。「ミスターSU薬」ですね。

糖尿病治療薬『DPP-4阻害薬』が、日本で初めて発売」で説明しましたが、DPP-4で分解されるインクレチン(GIPとGLP-1)は、受容体に結合するとGTP結合タンパク質Gsを介して、β細胞内cAMP濃度を上昇させます。これがEpacを活性化し、インスリン分泌を促進するのです。

今回、トルブタミドおよびグリベンクラミドといった一般的に使用されているSU薬が、異なるメカニズムでEpac2を活性化させることが明らかになりました。
論文がScienceに掲載されたのは少し前ですが、昨日のGCOE講演会で清野先生の講演を聴いてやっと理解できました。

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