うつ病、血液検査で診断 白血球の遺伝子反応に着目
asahi.com(朝日新聞社、7月11日19時52分)の記事です。
血液検査でうつ病かどうかを診断する方法を、厚生労働省の研究班(主任研究者・大森哲郎徳島大教授)が開発した。うつ病患者と健常者で白血球の遺伝子の反応が微妙に異なることを利用した。数年後の実用化を目指す。問診と併せて、数値化できる簡便な診断法が使えれば、患者の見逃しが減ると期待される。
研究班は白血球の遺伝子がストレスで変化することに着目し、それをうつ病の診断に使えないか調べた。約3万個の遺伝子の中から、神経伝達や免疫などに関連する24の遺伝子が、うつ病患者と健常者で異なる働き方をすることを突き止めた。
医師の面接によってうつ病と診断された17~76歳の患者46人と健常者122人を分析した結果、うつ病患者の83%(38人)、健常者の92%(112人)で、特定の遺伝子が突き止めた通りに反応し、正しく判定できた。
研究班は今年から2年間、対象を増やして診断し、実用化できる精度か確かめる。うつ病以外の精神科の病気と、はっきり見分けることができるかも調べる。実用化されれば、患者から採った血液2.5ミリリットルを処理した液を、遺伝子チップという分析器具で反応させて診断できるという。
うつ病は、医師が患者と面接し、症状から診断している。しかし、うつ病と他の病気との境目があいまいな例も多く、専門医でも診断に迷うことが少なくないという。
大森教授は「血液検査による診断法が実用化されても、医師の面接による診断は必要だ。血液検査が実用化、普及すれば、一般の医師が診察する際に、これまで見過ごされてきた患者を治療に結びつけることが期待できる」と話している。
この方法の詳細は、特許公報「うつ病診断方法」に書かれています(詳細をみる)。
特許公報を読むと、記事にある「白血球の遺伝子反応」というのが、白血球に多く発現している遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)量を、マイクロアレイとよばれる遺伝子チップで測定することだとわかりました。
「うつ病診断方法」の表1には、「うつ病評価用プローブリスト」として、20の遺伝子があげられていますが、個々の遺伝子とうつ病との関連は不明です。
特許では、これらの遺伝子の発現(mRNA量)の「ばらつき」が大きいと、うつ病と診断できると主張しています。特定の遺伝子の発現が増えたとか減ったとかではなく、発現の「ばらつき」の大きさが指標です。記事と特許文書では少し数字は違いますが、確かに患者ではばらつきは大きく、健常者ではばらつきは小さいです。
記事によると、国立精神・神経センターの樋口輝彦総長は、「今回の診断法が高い確率でうつ病を見分けられることが明らかになれば、診断の手法として有効な方法といえるのではないか。」、「今後、白血球の遺伝子の変化と、うつ病の原因とされる脳内の変化との関係がわかれば、うつ病の原因究明にもつながる。」と言っています(一部太字に改変)。
朝日の記者は、肯定的にとらえているようですが、私にはきわめて慎重な発言にみえます。太字部分のハードルは、非常に高いと思います。
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