外科医不足を憂い行動する会
「日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」設立
若手外科医「増やす会」が発足=公開講座など情報発信
冗談のような話ですが、「日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」(略称、「若手外科医系医師を増やす会」)は、5月25日の東京都からの設立認証を受け、6月19日にNPO法人としての発足発表会を開催しました。(NPOのホームページをみる)
上記の新聞や時事通信の報道では、「若い医師が外科を選ばなくなっている。10~15年後にどうなるか。がんの手術を海外で受けるような時代になるかもしれない」、「外科医の労働環境を改善するため行政への働き掛けを行う」などと書かれていますが、どうして外科が選ばれないのか?労働環境はどう悪いのか?などは、わかりません。
若手外科医系医師を増やす会、外科医の減少を食い止める目的でNPO法人として始動
この「マイライフ手帳@ニュース」の記事では、「なぜ外科医が減少しているのだろうか?」という疑問の答えとして、「外科医の労働時間は長く、医療事故や提訴のリスク、労働に見合う対価が得られないことが、外科医志望者の減少につながっている」との名大教授のコメントを引用しています。
さらに、「環境面や対人関係、仕事・キャリア面、人生プランなどについて、外科医には不安が多い」、「外科医の過酷な労働条件」、「ハイリスクローリターン」などが学生や議員のコメントとして書かれています。
これらの情況を改善するためには、どのようなことが提案されているのでしょうか?
NPOのホームページには、「広く一般市民を対象とし、ホームページやパンフレットなどによる情報発信事業や、地域の医療関係機関・外科医学会などと緊密に連携したセミナーや講演会事業などを積極的、継続的かつ組織的に推進し、わが国の外科医数の減少傾向に歯止めを掛け、反転増加に向かうよう務める」と書かれています。
読売新聞の記事によると、同NPOは、「来春の診療報酬改定に向けて外科の技術料の大幅増額を国などに働きかけるほか、模擬職場体験などを通じて若者に外科医の魅力を伝える運動などに取り組む」としています。
こんなことで問題は解決するのでしょうか?
外科学会はこれまで、高騰した医療機器料を保険医療制度に組み込むために、手術料を意図的に抑えてきました。 保険医療には、財源に上限があるので、技術料の大幅増額は難しいでしょう。外科医だけでなく、勤務医の待遇改善も、保険医療や地方財政の窮状を考えると極めて困難です。逆に、政府は、開業医の収入を抑えることで、勤務医を確保しようとしています。
記事でも指摘されていますが、東京女子医大事件のように、診療結果次第で、医師が「業務上過失致死」で逮捕されるという情況は改善されていません。公立病院では、外科医の仕事がどんなにハードでも横一線の給与体系です。NPOの提案では不十分のような気がします。外科医の数は本当に足りないのでしょうか?プライマリー・ケアに関わる外科医は別として、心臓外科や呼吸器外科などの「専門医」の数は諸外国と比べても、決して少なくないと思います。
外科医が術前診断、手術、化学療法、術後管理、ターミナル・ケアのすべてをやる現状を改め、手術に専念できれば、現在の外科医の人数で十分なはずです。外科医は手術に専念、術前診断は内科医、放射線科医が行い、化学療法は腫瘍内科医、ターミナルは緩和医療という分業体制を、大学病院などの基幹病院で早期に確立することが重要です。
内視鏡手術などの高度技術に混合診療(保険の効く治療と効かない治療を混ぜる)を導入することも、財源の確保には役立つでしょう。「学会費収入」や「安価な労働力」を確保するという発想では、外科医不足は解決しないと思います。
コメント