アルツハイマー病、薬3種の併用有効 iPS細胞で特定
以下は、記事の抜粋です。
アルツハイマー病で、患者の脳にたまる特定のたんぱく質を減らす効果がある薬を、京都大の井上治久教授らの研究グループが、患者らから作ったiPS細胞を使って特定した。パーキンソン病の治療薬など3種類の組み合わせが有効という。
アルツハイマー病では、患者の脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が発症前からたまることが分かっており、蓄積を減らせば発症を抑え、治療につながると期待されている。
グループは、患者の皮膚などから作ったiPS細胞を使って大脳皮質の神経細胞を作り、病気の状態を再現。患者9人と健康な人4人の細胞を使い、1258種類の既存薬からアミロイドβを減らす効果があるものを探した。その結果、パーキンソン病、ぜんそく、てんかんの治療薬という3種類の併用が最も効果が高く、アミロイドβが作られる量を平均30%以上減らせた。
発症前から服用すればアミロイドβが作られるのを抑えて発症を予防できると、井上さんらは期待する。ただ、それぞれの薬は安全性が確認されているが、組み合わせた場合の副作用などを詳しく調べる必要があり、ただちには治療に使えない。
元論文のタイトルは、”iPSC-Based Compound Screening and In Vitro Trials Identify a Synergistic Anti-amyloid β Combination for Alzheimer’s Disease”です(論文をみる)。
論文によると、3つの薬は、パーキンソン病治療薬がブロモクリプチン(bromocriptine)、喘息治療薬がクロモリン(クロモグリク酸、 cromolyn)、てんかん治療薬がトピラマート(topiramate)だと思います。
ブロモクリプチン(パーロデル®)はドーパミンという神経伝達物質のD2受容体に働く薬です。統合失調症に使うD2受容体遮断薬と真逆の作用ですので、副作用としては幻覚と妄想などの精神症状が良く知られています。また、嘔吐中枢に働いて嘔気・嘔吐をおこします。
クロモリン(インタール®)は比較的安全性の高い薬です。服用した場合は嘔気などの消化器症状が出るとされています。
トピラマート(トピナ®)はNaチャネルやCaチャネルを抑制する作用が知られています。興奮性シグナルの働きが阻害されるため、てんかんによる異常な電気刺激を抑制すると言われています。部分発作とよばれるてんかんに対して他の抗てんかん薬と併用して使われます。副作用として食欲の減退があるので、アメリカではフェンテルミン(日本では未承認)との合剤がQnexa®という名前で抗肥満薬として使われています。
下は論文の図ですが、薬の濃度がやや高いのが気になります。動物モデルを用いて、ヒトの臨床用量に近い薬物投与量で効果があるかどうかを調べる必要があると思います。
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