「万能型ワクチン」開発進む あらゆるせきや風邪、インフルを予防と米研究チーム
以下は、記事の抜粋です。動物実験レベルですが、興味深い報告です。
一つのワクチンで、あらゆるせき症状や風邪、インフルエンザ、さらには細菌性肺感染症を予防し、複数のアレルギー症状の緩和すらできるかもしれない。
従来のワクチンは、免疫システムに働きかけ、特定の感染症を認識して闘うよう訓練する。例えば、はしかのワクチンは、はしかのみを予防し、水ぼうそう(水痘)のワクチンは、水ぼうそうのみを予防する。
しかし、今回報告されたワクチンは、免疫システムを訓練するのではなく、免疫細胞同士のコミュニケーション方法を模倣するのだという。
鼻腔内に噴射された「万能型ワクチン」は、肺の白血球(マクロファージ)を「警戒態勢」に維持する。つまり、どんな病原体が侵入しようとしても、即座に反応できる状態を整えることになる。動物実験では、この効果が約3か月持続することが示された。
研究者たちは、こうした警戒態勢を作り出すことで、肺を通って体内に侵入するウイルス量を100~1000分の1に減らしたと報告している。
そして、体内にウイルスがわずかに侵入したとしても、残りの免疫システムが「待機状態にあり、超高速で撃退する用意が整って」いて、反応することが示されたと、スタンフォード大学の研究チームのバリ・プレンドラン教授は説明した。
研究チームは、このワクチンには、ブドウ球菌とアシネトバクター・バウマニという2種類の細菌にも予防効果があると報告している。
今回の研究には関与していないオックスフォード大学のフェレイラ教授フェレイラ教授は、ヒトへの臨床試験で効果が確認されれば、「一般的なせきや風邪、そのほかの呼吸器感染症から人々を守る方法に、変化をもたらす可能性がある」とした。
しかし、まだ多くの課題も残されている。実験では、ワクチンを鼻腔内に噴射して投与しているが、人間の肺の奥深くまで到達させるには、吸入器で吸い込む必要があるかもしれない。
人間でも同様の効果が得られるのかや、免疫システムの警戒態勢がどれほど持続されるのかは分かっていない。そこで研究者たちは、ワクチンを投与した被験者を意図的に感染させ、体の反応を観察する臨床試験を計画している。
また、ワクチンが免疫システムを通常の状態以上に活性化させ、免疫異常を引き起こす可能性もあるかもしれない。リヴァプール熱帯医学大学のジョナサン・ボール教授は、「体を『警戒状態』に保つことで、準備態勢が過剰に整った免疫システムが誤って味方を攻撃することがないよう」注意すべきだと指摘した。
アメリカの研究チームは、免疫システムを恒久的に活性化させるべきではないという考えで、「万能型ワクチン」を既存のワクチンに置き換えるのではなく、補完するかたちで使用すべきだとしている。
2020年初頭に拡大し始めた新型コロナウイルスのように、パンデミックの初期段階で「万能型ワクチン」を使用すれば、特定の感染症向けワクチンが開発されるまで人々の命を救う、時間稼ぎになるかもしれない。
元論文のタイトルは、”Mucosal vaccination in mice provides protection from diverse respiratory threats(マウスにおける粘膜ワクチン接種は、多様な呼吸器系脅威からの防御を提供する)”です(論文をみる)。以下は、論文の要約です。
従来のワクチンは特定の病原体を標的とするため、多様な呼吸器系の脅威に対する効果は限定的であった。本研究では、マウスにおいてSARS-CoV-2および黄色ブドウ球菌による感染に対し少なくとも3か月間、広範かつ持続的な防御効果を示した、Toll様受容体(TLR)4および7/8リガンドとモデル抗原オボアルブミンを組み合わせた経鼻リポソーム製剤について報告する。さらに、このワクチンはマウスを他のウイルス(SARS-CoV-2、SARS、SCH014コロナウイルス)、細菌(アシネトバクター・バウマニ)、およびアレルゲンからも防御した。この防御は、肺胞マクロファージ(AM)を刷り込み、抗原提示および抗ウイルス免疫を増強する、持続的なオボアルブミン特異的CD4 +およびCD8 +メモリーT細胞によって媒介された。感染後、ワクチン接種を受けたマウスは迅速な病原体特異的T細胞および抗体応答を開始し、肺に異所性リンパ構造を形成した。これらの結果は、多様な呼吸器系の脅威に対する「万能ワクチン」の可能性を明らかにしました。


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