中国人も台湾人も夜遅くまで働いている 日本人だけが「働き方改革」でいいのか
以下は、記事の抜粋です。
先日、私はUCLA-NUS EMBA(アメリカ・UCLAアンダーソン経営大学院とシンガポール国立大学が共同で運営するエグゼクティブMBA)のプログラムで上海を訪れました。授業の合間に中国人のクラスメイトに普段の働き方を聞いてみたところ、驚くべき答えが返ってきました。
「夜9時、10時まで残業するのは当たり前。土曜日も出勤することがある」と言うのです。念のため台湾人のクラスメイトにも聞いてみましたが、答えは同じでした。「台湾も似たようなものです。特に繁忙期は土曜出勤が続きます」。
私は日本との違いに愕然としました。日本では「働き方改革」が叫ばれ、残業削減や有給取得が推進されています。しかし、すぐ隣の中国や台湾では、むしろ労働時間が伸びているのです。
1人当たりGDPで韓国・台湾に抜かれた日本
この働き方の違いは、経済力の差となって如実に表れています。日本の名目GDPは2010年に中国に抜かれて世界3位に転落し、2023年にはドイツにも抜かれて4位、2025年にはインドに抜かれて5位まで後退しました。さらに深刻なのは一人当たりGDPです。日本は2000年にはOECD加盟国中2位でしたが、2022年には21位まで下落し、2024年には韓国に、そして台湾にも抜かれました。IMFの2025年予測では日本は世界38位で、G7では最下位です。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称された日本が、アジアの中でも「普通の国」になりつつあるのです。
デフレでも労働時間を伸ばす中国と台湾
中国の国家統計局(NBS)によると、2025年11月の週平均労働時間は48.6時間で、2025年1月には49.1時間と統計開始以来の過去最高を記録しました。「朝9時から夜9時まで週6日働く(996)」という習慣がテック業界を中心に広まり、2021年に最高人民法院が違法と判断しましたが、実態は変わっていません。中国経済はデフレと不動産バブル崩壊に苦しんでいますが、労働者たちはむしろ労働時間を伸ばしているのです。
台湾も同様です。労働部(MOL)によると2022年の年間総労働時間は2,008時間で、OECD調査対象39カ国・地域中6位の長さ。パートタイム比率がわずか3.5%と低く、ほとんどがフルタイム労働者です。TSMCをはじめとする半導体産業の躍進は、この猛烈な労働によって支えられています。
「見かけの時短」に過ぎない日本の働き方改革
では日本はどうでしょうか。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2024年の年間総実労働時間は全労働者平均で1643時間。2000年の1853時間から約200時間も減少しています。しかし、これは「働き方改革」の成果ではありません。日本ではパートタイム労働者比率が約30%に達しており、彼らの年間労働時間は962時間に過ぎません。この短い労働時間が全体平均を大きく押し下げているのです。
一般労働者(正社員等のフルタイム労働者)だけを見ると、2024年の年間労働時間は1946時間。2000年代から2000時間前後で推移していましたが、2019年以降ようやく2000時間を下回りました。しかし、この1946時間という数字は、台湾の2008時間と比べても短く、中国の週48時間超(年間換算で約2500時間)とは比較になりません。しかも日本のフルタイム労働者の労働時間は、過去と比べても着実に短くなっているのです。
インフレ下で「時短」を続ける日本の奇妙さ
ここで私が指摘したいのは、日本の置かれた状況との矛盾です。中国はデフレで苦しみながらも労働時間を伸ばしている。一方、日本は30年ぶりのインフレに直面し、実質賃金は減少を続けているにもかかわらず、いまだに「働き方改革」の名のもとに労働時間の削減を推進しています。これは奇妙ではないでしょうか。厳しい言い方になりますが、日本人はもっと働かなければなりません。デフレ下で猛烈に働く中国、OECD6位の長時間労働で半導体覇権を握った台湾。彼らと競争しながら、日本だけが「ワークライフバランス」を唱えていて勝てるはずがありません。
もちろん、単に長時間働けばいいという話ではありません。AI・デジタル技術を活用した生産性向上、成果で評価する人事制度への転換、そして「稼ぐ力」を高める自己研鑽。これらを同時に進めながら、必要なときには徹底的に働く。そうした覚悟がなければ、日本はますます中国にも台湾にも引き離されていくでしょう。インフレで実質賃金が減り続ける今こそ、日本人一人ひとりが「自分の働き方」を根本から見つめ直すときです。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称された日本がよい国だったかどうかわかりませんが、難しい問題だと思います。



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