「抗生物質ください!」にはどう対応すべき?
以下は、記事の抜粋です。
<今回の症例>
28歳男性。生来健康
今日からの37℃台の発熱、咳嗽、喀痰、咽頭痛あり
身体所見上、咽頭の軽度発赤を認める
<診察の結果、経過観察で十分な急性上気道炎のようです>
患者:そうですか。仕事が忙しくて、風邪をひいている場合じゃないんです。とにかく早く治したいので、抗生物質をください。
模範解答:風邪の原因はほとんどが細菌ではなくウイルスです。抗生物質は細菌をやっつける薬なので、ウイルスをやっつけることはできません※1。風邪に効果は期待できないうえに副作用のリスクもある※2ので、今回は使わないほうがいいと思います。風邪に抗生物質を希望する患者さんが多いので、厚労省からも「風邪に対して抗生物質を使わないことを推奨する」という通達が出ているんですよ※3。抗生物質なしで一旦経過をみませんか※4。もちろん症状が悪化したときは風邪とは異なる別の病気を併発している可能性もありますので、そのときは必ずもう一度受診してくださいね。
※1:ここを誤解している患者さんは多い。
※2:あくまで患者さんの不利益になることを強調する。
※3:客観的な意見を伝えると納得してもらいやすい。
※4:一度猶予をもらうのも手。
点滴やうがい薬も誤解が多い
「風邪は点滴で治る」と思い込んでいる人もいますし、ヨード液(商品名:イソジンなど)のうがい薬が風邪予防につながると信じている人もいます。
患者さんにこうした希望がある場合、完全に否定するのではなく、それぞれのデメリットや拠り所となるエビデンスを説明したうえで判断してもらいます。
点滴であれば、デメリットとして
末梢ルート確保に伴う感染リスクや神経障害などのリスク
長時間病院に滞在することによる体調悪化のリスク
補液に伴う循環器系への負担
をきちんと説明する必要があります。
ヨード液については、「ヨード液よりも水うがいのほうが風邪予防や症状の緩和につながる」といった客観的なエビデンスがあることを説明するとよいでしょう。
ヨード液については、一日に何回も使用を継続すると、口腔内の常在細菌も絶滅に近い状態になりかねず、乳酸菌などの善玉菌も含む口内フローラが破壊される可能性もあります。また、高い殺菌効果と引き換えにノドの粘膜の細胞も傷つけてしまい、免疫力が低下した結果、新型コロナやインフルエンザを含む風邪をひきやすくなることも明らかになっています。
忙しい外来では、ここまでの対応は難しいとは思いますが、参考になると思います。
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