オランウータンが「薬草」で傷を積極的に自己治療した

オランウータンが「薬草」で傷を治療、野生動物で初観察…意図的に植物を利用、治療効果はどうやって知ったのか?

我々は霊長類の端くれであることを思い知らされる話です。以下は、記事の抜粋です。


2022年6月23日に撮影されたラクス。頬に大きな傷がある。この2日後に、ラクスは噛んだアカルクニンの葉を傷の上に貼り付けていた。

2022年の夏、「ラクス」という愛称で親しまれているスマトラオランウータン(Pongo abelii)が、抗菌、抗炎症、抗真菌、抗酸化作用のある「薬草」を使って、頬にできた大きな擦り傷を丁寧に手当てしていたのだ。

インドネシア、スマトラ島のグヌンルセル国立公園内にあるスアックバリンビン研究センターは1994年から、周囲の保護林に生息するオランウータンを観察してきた。動物の動きや行動を注意深く追跡、監視、記録している。

ラクスは、2009年から研究センターのなかやその周辺で暮らしている。2022年6月のある朝、研究者たちは、ラクスの右目の下の頬に大きく擦りむいた傷があることに気づいた。

その前に、ラクスは監視エリアの外に出て行っていたため、どのようにして負傷したのかは誰にもわからない。おそらく、木から落ちて枝にぶつかったのか、他のオランウータンと争ったときに負った傷だろうと思われる。

3日目に、研究者たちはラクスがアカルクニン(Fibraurea tinctoria)というつる植物を探し求め、それを食べている様子を観察した。一般に傷の手当てや赤痢、糖尿病、マラリアの治療に使われている植物だ。

わざわざアカルクニンが生えている場所まで行って食べるという行動自体が極めて珍しい。ラクスの傷が感染症を起こしたり、発熱していたりしたら、理論的にはアカルクニンを食べることで症状は改善しただろう。ラクスがそうと理解してこれを食べていたのだとしたら驚くべきことだと、研究者は考えた。次にラクスが取った行動は意図的としか思えないものだった。

ラクスは、葉をちぎって口に入れると、飲み込むことなくそれを噛み、抽出した液体を直接自分の傷口に塗っていた。それを何度も繰り返していました。このようにして7分間傷の手当てを続け、その後さらに約30分にわたってアカルクニンを食べ続けた。

翌日も、ラクスはまたアカルクニンを食べに戻ってきた。3日後、傷口はふさがれ、順調に回復しているように見えた。1カ月ほどで、傷はほとんど目立たなくなった。

ラクスの行動が重要なのは、使用した葉に薬効成分があることがよく知られているためだ。また、ラクスはゆっくりと時間をかけて、丁寧に傷の手当てをし、治りも早かった。


元論文のタイトルは、”Active self-treatment of a facial wound with a biologically active plant by a male Sumatran orangutan(雄のスマトラオランウータンによる生理活性植物による顔面創傷の積極的自己治療)”です(論文をみる)。以下は、その動画です。

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