65歳未満の成人に対する遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの有効性
以下は、記事の抜粋です。
65歳未満の成人に対する遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの有効性を鶏卵由来の従来ワクチンと比較したクラスターランダム化比較試験の結果が報告された(論文をみる)。
研究対象集団には18歳から64歳までのワクチン接種者163万328例が含まれた(組み換えワクチン群63万2,962例、従来ワクチン群99万7,366例)。研究期間中に組み換えワクチン群で1,386例、従来ワクチン群で2,435例のインフルエンザがPCR検査で診断された。
50~64歳の参加者では、従来ワクチン群では925例(1,000例当たり2.34例)がインフルエンザと診断されたのに対し、組み換えワクチン群では559例(1,000例当たり2.00例)がインフルエンザと診断され有意に高かった(相対的な有効性15.3%)。一方、インフルエンザ関連の入院に対する予防効果は有意に高くはなかった。
50~64歳の成人において、遺伝子組み換えインフルエンザワクチンは鶏卵由来の従来ワクチンと比較して感染予防効果が有意に高いことが示された。従来ワクチンと比べて相対リスクで15.3%低下させたという結果は、従来ワクチンの感染予防効果がおおむね40~60%程度ということを考えると、上乗せ効果として決して低い数字ではないと考える。
インフルエンザ関連の入院や市中肺炎による入院を有意に減少させる効果は示されなかったが、どちらも16%程度の相対的な有効性を認めた。試験対象者の入院率が決して高くない年齢層であることを考えると、一定の効果を示したと思われる。
遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの特徴として、従来の鶏卵由来のインフルエンザワクチンの3倍量のヘマグルチニン蛋白を含んでいることが挙げられる。過去の研究では、高齢者において高用量のインフルエンザワクチンのほうが標準用量のワクチンと比べて感染予防効果が高いことが示されており、今回、65歳未満の成人を対象とした本研究でも有効性が示された。ワクチンに含まれる抗原量が増えることで、免疫原性が高まると考えられている。
遺伝子組み換えインフルエンザワクチンは本邦ではまだ認可されていないタイプのワクチンであり、今後の国内導入に向けて話が進むかどうか注目したい。
サノフィは昨年の12月19日、厚労省に高用量インフルエンザワクチン(QIV-HD)の製造販売承認申請を行ったと発表しました。現時点ではまだ承認されていません。
QIV-HDは、米国や欧州で販売されている高用量4価ワクチンです。TIV-HDは、65歳以上の成人において他の標準用量3価インフルエンザワクチンと比較して優れた有効性を示し、心肺イベントや肺炎などによる入院やインフルエンザに関連する合併症に対しリスク低下を示すとされています。
高齢者においては、免疫老化やフレイルおよび併存する合併症の増加により標準用量インフルエンザワクチンに対する免疫応答が健康な若年成人に比べ十分でなく、ワクチン中の1株当たりの抗原量を増やすことが高齢者の予防効果を高める方法の1つとなるため、1株当たり標準用量の約4倍(60μg)の抗原量を含むQIV-HDが開発されました。
サノフィによると、現在、世界30カ国以上で承認、主要国の公的機関により高用量ワクチンの使用を推奨する肯定的見解が示されているそうです。日本では、組み換えワクチンどころか高用量ワクチンもまだ使われていません。
以前に書きましたが、日本ではインフルエンザワクチンは、北里研究所(埼玉県北本市)、化血研の主要事業を承継したKMバイオロジクス(熊本市)、デンカ生研(東京都中央区)と阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)の4つの比較的小さな国産メーカーで鶏卵を用いて作られており、輸入はされていません。
国産ワクチンメーカー4社はすべて、厚労省の天下り先です。天下りを受け入れるのは、勝てそうもない海外製ワクチンをブロックするためかもしれません。
「65歳以上で発症を45%抑制」とかという日本製のインフルエンザワクチンの有効性はどの程度信用できるのでしょうか?「組み換え>高用量>標準量」というこの話をみると、疑いたくなります。
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