抗血小板薬「シロスタゾール」は認知症の進行予防に有効 – 国循
以下は、記事の抜粋です。
国立循環器病研究センターは2月27日、洲本伊月病院などとの共同研究により、脳梗塞再発予防薬として広く用いられている抗血小板薬「シロスタゾール」が認知症の進行予防にも有効であることを明らかにしたと発表した。研究の詳細な内容は、2月27日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
シロスタゾールは、脳梗塞の予防に用いられる抗血小板薬で、血栓形成を抑制すると共に、血管を拡張させ脳血流を上昇させる作用があることが知られている。
アルツハイマー型認知症に用いられる「ドネペジル塩酸塩」という薬剤を内服している洲本伊月病院の患者を対象に、シロスタゾール内服者と非内服者年間の認知機能低下率を「ミニメンタルステート検査(MMSE)」による比較が実施された。
調査は、シロスタゾールが追加された(6カ月以上投与された)もしくは追加されなかった患者で、12カ月以上の間隔で2回以上MMSEによる認知機能評価を受けたすべての患者を抽出した。ドネペジル塩酸塩のみで治療された患者87例のMMSEスコアの時間的変化と、ドネペジル塩酸塩とシロスタゾールで治療された患者69例のスコア変化とが比較された。
その結果、認知症が進んでしまった患者を含む認知症全体の解析では、シロスタゾールの同時投与によるMMSEスコアの低下は有意には抑制されなかった。しかし、軽度認知症(MMSEスコアが22点以上26点以下)患者のサブグループ解析により、ドネペジル塩酸塩単独で治療された36名の患者ではMMSEスコアの2点以上の低下が観測されたものの(-2.2/年)、シロスタゾールを6カ月以上追加投与された34名の患者では、MMSEスコアの低下が0.5点と、抑制された(-0.5/年)。
元論文のタイトルは、”Cilostazol Add-On Therapy in Patients with Mild Dementia Receiving Donepezil: A Retrospective Study”です(論文をみる)。
シロスタゾールはcAMPの分解に関わる3型ホスホジエステラーゼ(PDE3)に選択的に働きます。PDE3は主に血小板・心臓・血管平滑筋に存在するので、シロスタゾールを投与すると細胞内cAMPレベルの上昇によりプロテインキナーゼA(PKA)の活性型が増え、血小板の凝集が抑制されます。PKAには平滑筋の収縮に関わっているミオシン軽鎖キナーゼを抑える働きもあるため、血管拡張作用も引き起こすと考えられています。
副作用としては、頭痛が多く報告されていますが、アスピリンと異なり出血リスクは低いとされています。問題としては、シロスタゾールが有効なのは認知症が軽い場合だけであること、二重盲検による前向き試験ではないこと、CYP3A4 やCYP2C19によって代謝されるのでグレープフルーツジュースなどと薬物相互作用があること、などがあると思います。まだまだ、実際の臨床で積極的に使うレベルではないでしょう。
コメント
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非常に興味深い内容です。
他の循環系医薬品も効果があるんじゃないかと思えてならないです。