放流しても魚は増えない~放流は河川の魚類群集に長期的な悪影響をもたらすことを解明~
以下は、記事の抜粋です。
ポイント
●理論・実証分析の双方から、河川における放流が魚類群集に与える影響を検証。
●放流は種内・種間競争の激化を促し、多くの場合で群集構成種を長期的に減らすことを解明。
●魚類資源の回復には、河川等の生息環境の改善等の別の抜本的対策が求められることを示唆。
概要
北海道大学の先崎理之助教は、ノースカロライナ大学の照井 慧助教、北海道立総合研究機構の卜部浩一研究主幹、国立極地研究所(当時)の西沢文吾氏と共同で、魚のふ化放流は多くの場合で放流対象種を増やす効果はなく、その種を含む生物群集を減らすことを明らかにしました。
飼育下で繁殖させた在来種を野外に放す試みは、野外個体群の増強を目的として様々な動植物で行われています。特に、漁業対象種のふ化放流は、国内外に広く普及しています。一方、こうした放流では自然界には生じえない規模の大量の稚魚を放つため、生態系のバランスを損ね、放流対象種を含む魚類群集全体に長期的な悪影響を及ぼす可能性があることが懸念されています。
そこで研究チームは、シミュレーションによる理論分析と全道の保護水面河川における過去21年の魚類群集データによる実証分析を行い、放流が河川の魚類群集に与える影響を検証しました。実証分析で対象とした保護水面河川には、放流が行われていない河川とサクラマスの放流が様々な規模で行われている河川が含まれます。これらの分析の結果、放流は種内・種間競争の激化を促すことで、放流対象種の自然繁殖を抑制し、さらに他種を排除する作用を持つため、長期的に魚類群集全体の種数や密度を低下させることが明らかになりました。本研究結果は、持続可能な魚類の資源管理や生物多様性保全に対する放流の効果は限定的であり、生息環境の復元などの別の抜本的対策が求められることを示しています。
元論文のタイトルは、”Intentional release of native species undermines ecological stability(在来種の意図的放流は生態系の安定性を損ねる)”です(論文をみる)。
NHKなどのメディアでも、子供たちを使った放流事業がいかにも良い事業のようには報道されていいます。放流事業そのものと合わせて、このような報道も即刻やめるべきです。
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