TYK2を選択的に阻害する経口乾癬治療薬デュークラバシチニブ(ソーティクツⓇ)

TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」
以下は、記事の抜粋です。


今回は、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「デュークラバシチニブ錠(商品名:ソーティクツ錠6mg」を紹介します。本剤は、TYK2を選択的に阻害する世界初の経口薬で、既存治療で効果が不十分であった患者や、副作用などにより治療継続が困難であった患者の新たな選択肢として期待されています。

<効能・効果>
本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年11月16日に発売されました。既存の全身療法(生物学的製剤を除く)などで十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ場合や、難治性の皮疹や膿疱を有する場合に使用します。

<安全性>
第III相臨床試験において、本剤投与群の22.0%(117/531例)に副作用が発現しました。主なものは、下痢2.6%(14例)、上咽頭炎2.4%(13例)、上気道感染2.3%(12例)、頭痛1.9%(10例)などでした。重大な副作用として、重篤な感染症(0.2%)が報告されています。

<患者さんへの指導例>
1. この薬は、乾癬の原因となる酵素の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。
2. 免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体がだるい、咳が続くなどの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意してください。
3. 本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。
4. 感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。

乾癬の治療としては、副腎皮質ステロイドやビタミンD3誘導体による外用療法、光線療法、シクロスポリンやエトレチナートなどによる内服療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在、乾癬に適応を持つ生物学的製剤は下表のとおりです。

また、同じ経口薬としてPDE4阻害薬のアプレミラストが「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応で承認されています。臨床試験において、本剤投与群ではアプレミラストを上回る有効性を示しており、この点が評価されて薬価算定では40%の加算が付きました。

安全性では、結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性があるため注意が必要です。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。

TYK2阻害薬は自己免疫疾患に対する新規作用機序の薬剤であり、今後の期待として潰瘍性大腸炎や全身性エリテマトーデスなどの幅広い疾患に適応が広がる可能性があり、注目されています。


TYK2は、ヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーに属する非受容体型チロシンキナーゼの1つで、I型IFN、IL-23、IL-12 などのサイトカインの受容体に会合して、その下流の細胞内シグナル伝達を制御しています。デュークラバシチニブは、TYK2の触媒部位でない機能制御部位に結合し、サイトカインなどによるTYK2の活性化が阻害され、TYK2が介在する炎症や免疫応答が抑制されると考えられています。

下は、もう少し詳しい図です。psoriasisが乾癬です。

AA: alopecia areata, 円形脱毛症 psoriasis: 乾癬 AD: atopic dermatitis アトピー性皮膚炎 vitiligo 白斑

 

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