面白くて考えさせられる研究に贈られるイグノーベル賞2022年度受賞者まとめ、連続16人目の日本人受賞も
今年のイグノーベル賞が発表されました。日本人も受賞したようですが、10の賞の中から医学賞の研究を以下に紹介します。
医学賞は、ポーランドの研究チームによる「化学療法を行う際アイスクリームを使用すると副作用が減少することの証明について」です。
自家造血幹細胞移植を受ける患者は、事前に薬物投与による化学療法を受けます。この化学療法の副作用として口腔粘膜炎が報告されているのですが、この対策として氷をなめることがよく効くとされていました。研究チームは、自家造血幹細胞移植前の化学療法を受ける患者に対し、アイスクリームを食べさせました。すると、アイスクリームを食べた患者では口腔粘膜炎の発症率が低下したことがわかりました(論文をみる)。
自家造血幹細胞移植 は、多発性骨髄腫、アミロイドーシスなどの病気の患者に対する標準治療の一部です。その過程での高用量のメルファランを用いた化学療法により、患者はさまざまな毒性を経験します。口腔粘膜炎は、この治療の最も一般的な副作用の 1 つであり、生活の質を最も悪化させ、低下させるものとされています。
これまで口腔粘膜炎を防ぐためには、氷(アイスチップまたはアイスキューブ)による凍結療法が使われていました。この作用メカニズムは血管収縮であり、口腔粘膜領域の炎症を止め、毒性薬物と粘膜層との接触を減らします。使用されるメルファランの半減期が短く、最大毒性が注入開始後数時間に限られるために、凍結療法が有効だと考えられています。実際、高用量メルファラン投与中の凍結療法は、自家造血幹細胞移植を受ける患者の 口腔粘膜炎 の発生率と重症度を効果的に軽減するとされています。しかし、メルファラン注入の時間が長いため、一部の患者は冷感を訴え、注入が終了する前に氷片の使用を中止してしまうそうです。この中止を改善するのではと氷の代わりにアイスクリームが使われたのがこの研究です。
左のグラフに示されているように、高用量メルファランによる前処置化学療法を受けた74人の患者のうち、52人が凍結療法を受けました。凍結療法グループの 15 人の患者 (28.84%) が 口腔粘膜炎 を発症したのに対し、凍結療法なしのグループでは 13 人の患者 (59.09%) が 口腔粘膜炎 を発症しました。この結果は、氷を用いた凍結療法とほぼ同等だそうです。とても素晴らしい研究だと思います。
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