森口氏論文共同執筆の教授処分…不名誉なオナラリーオーサー(honorary author)

森口氏論文共同執筆の教授処分…東京医科歯科大

以下は、記事の抜粋です。


iPS細胞から作った心筋細胞を患者に移植したと虚偽発表した森口尚史氏の論文を調査していた東京医科歯科大は12月28日、共同執筆者の佐藤千史同大保健衛生学研究科教授を、停職2か月の懲戒処分にしたと発表した。

研究にかかわっていない論文に執筆者として名を連ね、大学の信用を失墜させたと判断した。また、森口氏が使った海外出張旅費など、不適当とした経費約130万円の返還も佐藤教授に求めた。

同大の調査では、佐藤教授が共同執筆者になった、1996年~今年の論文23本のうち、実際に研究にかかわっていなかった論文は20本あった。

同大によれば、佐藤教授は森口氏の大学院時代の指導教官だが、iPS細胞に関する専門知識がなく、森口氏の論文の内容を検証せずに共同執筆者になった。この点を同大は「研究者としてあるまじき行為」と批判した。


この佐藤教授は、「オナラリーオーサー」だったのでしょう。関連記事で書いたように、オナラリーオーサー(honorary author、名誉著者)とは、実際にはその研究にはかかわっていないのに、論文の著者として名を連ねる人のことを指します。

the International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) では、著者として満たすべき条件(Authorship)を次のように規定しています。

Authorship credit should be based on 1) substantial contributions to conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; 2) drafting the article or revising it critically for important intellectual content; and 3) final approval of the version to be published. Authors should meet conditions 1, 2, and 3.

アメリカでは、影響力の強いビッグネームの研究者がオナラリーオーサーになることが多いようです。日本ではこの佐藤教授のように、ビッグ・ネームでなくても大学の講座や分野の教授だというだけで、上記の著者としての貢献をまったくしないで、配下の准教授や助教の論文の著者になることがまだまだあります。ひどい場合は、そんな人が責任著者(corresponding author)になったりしています。

大学の信用を失墜させるとかがなくても、オナラリーオーサーになること自体が悪いことを個々の研究者や大学のトップが認識する必要があります。森口iPS事件をきっかけにオナラリーオーサー問題が注目され、日本でも正しいオーサーシップが普及することを願います。

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オナラリーオーサー(honorary author、名誉著者)など。

コメント

  1. あ* より:

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    自分たちでは審査できない研究内容の人を論文の本数で採用したり、予算配分が研究グループの論文数で左右されたりする以上、政治的な理由で「オナラリーオーサー」を入れざるを得ないことが多いと思います。私個人は、一度もやったことはないので、その点でも変人に分類されました。偉い先生が名前を貸してやると仰ったら有り難く共著に入れないとダメなんですよね(笑)。

  2. tak より:

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    >あ*さん
    コメントありがとうございます。あ*さんは勇気がありますね。私の知っている例では、ある教員が指導した学生の論文で、同じ講座の教授をコレスポンディングオーサーにしないで投稿しようとしたら、学生の学位を認めないと威されたことがあるそうです。日本では「学位授与権」が教授にしか認められていない場合が多いので、こんなことも珍しくないと思います。

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