【インフルエンザ】耐性ウイルスへの懸念は無用
以下は、記事の抜粋です。
インフルエンザ治療で気掛かりなのが、耐性株や異常行動の問題。だが、薬剤の処方に大きな影響を及ぼすものではないことが明らかになっている。4種のノイラミニダーゼ阻害薬の年齢層別の使い分けにも方向性が見えてきた。
●耐性ウイルスは既に消滅 薬剤を控える必要はない―以前流行したタミフル(一般名オセルタミビル)耐性のインフルエンザウイルスは、今ではほぼ消滅した。
●ウイルスの耐性化を懸念してタミフル使用を控える必要はない―タミフルを使用した患者から耐性株が検出されたとの研究報告はあるが、これらが集団感染を引き起こしたケースはない。耐性獲得の代償として増殖・感染力を喪失するためとみられ、必要な症例には、タミフルなどの薬剤を適切に処方すべきだ。
●異常行動は薬剤によらず発生することが既に分かっている―抗ウイルス薬の種類、使用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴って発現する場合がある。異常行動は薬の内服の有無によらず起きており、10歳未満での発現率が高い。突然起きて走り回ることなどがあると説明し、注意を促す必要がある。
●現在発売されているノイラミニダーゼ阻害薬は4種類(日経メディカルより)。
●各年齢層における抗インフルエンザ薬の使用状況。吸入薬の使用が問題ない10~19歳でリレンザが優勢なのは、タミフルの処方制限によりリレンザしか使用できない時期があったためと考えられる(日経メディカルより)。
●計10回吸入が必要なリレンザより、1回の吸入で済むイナビルの方がおそらく利便性のため使用が多くなっている。ただし、吸入失敗の可能性もある。ラピアクタは、注射薬なのであまり使われないが効果は高く、A型インフルエンザで平均解熱時間が他の3種に比べて短いという意見もある。
インフルエンザウイルスに感染した場合、2~3日の潜伏期間の後症状が現われ、48時間で体内ウイルス濃度が最高になります。この段階まで来ると、多くの気道粘膜細胞にウイルスが感染済みです。ノイラミニダーゼ阻害薬の作用はウイルスの増殖を抑えるのではなく、細胞から出るのを阻害する作用ですから、48時間以降はタミフルやリレンザなどを投与する意味はほとんど有りません。
上の記事で、耐性菌の出現に関しては、薬物を投与しなくても耐性菌が出現する可能性があることは理解できましたが、「ウイルスの耐性化を懸念してタミフル使用を控える必要はない」という結論は少し飛躍しすぎだと思います。
やはり、薬剤を投与すれば耐性菌の出現確率は増加するでしょう。また、出現した菌の病原性の強さは、薬剤による耐性菌のセレクションとは独立した事象だと考えます。これらの理由から、「必要な症例には、タミフルなどの薬剤を適切に処方すべきだ。」というご意見には賛成ですが、特別な臨床的背景がなく発症から明らかに48時間以上経過している場合は、タミフルなどすべてのノイラミニダーゼ阻害薬の投与は控えるべきだと思います。
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