中年の脳を蝕む加齢と高血圧

中年の脳を蝕む高血圧

以下は、記事の抜粋です。


高血圧は40歳という若さでも脳の構造を損傷させる可能性がある━━こんな研究結果が、「The Lancet Neurology」オンライン版に10月31日掲載された。カリフォルニア大学のCharles DeCarli氏らの研究で明らかになった。脳の損傷は、高血圧症には至っていない高血圧前症の中年早期の成人の脳にもみられたという。

DeCarli氏らは、2009年の研究開始時に平均年齢39歳だった約600人を対象に、MRIで脳スキャンを行った。その結果、白質の構造的完全性の損傷や灰白質の容積減少など、高血圧症および高血圧前症の患者では脳の老化が進んでいた。

血圧上昇が中年早期の成人の脳に損傷を与え、血圧関連の脳損傷が生涯にわたり発生することが示唆されたのは今回が初めて。「今回の結果は明らかに、若いときに自分の血圧を知って治療することがその後の人生の脳の健康に影響を及ぼす可能性があることを示している」とDeCarli氏は述べている。

血圧上昇は、脳卒中や心血管リスクの増大に関連する。米国人の約5,000万人にみられ、死亡の最大の危険因子となっている。


元論文のタイトルは、”Effects of systolic blood pressure on white-matter integrity in young adults in the Framingham Heart Study: a cross-sectional study”です(論文をみる)。

高齢者の場合、年齢と血管系リスクファクターが脳の傷害と関連付けられていることは以前からわかっていましたが、50歳ぐらいの比較的若い世代において高血圧が脳に影響するかどうかは今まで不明だったようです。

Framingham Heart Studyの第3世代において、脳のMRI(T1強調画像と拡散テンソル画像)によって、fractional anisotropy(FA)値、平均拡散能(mean diffusivity: MD)、および灰白質量を測定し、年齢や収縮期血圧などと比較しました。

その結果、年齢は、白質におけるFAの減少とMDの増加に関連していました。さらに、年齢は灰白質量の減少とも独立して関連していました。

収縮期血圧の増加も、FAの減少とMDの増加にリニアに関連していました。この現象は、脳梁の前部、前頭後頭束の下部、視床から前頭回上部への線維束において顕著でした。さらに、収縮期血圧の増加は、側頭葉内側のブロードマンのエリア48と中部側頭回のブロードマンのエリア21における灰白質量の減少と関連していました。

要するに、神経回路網も神経細胞体も年齢や収縮期血圧の増加に比例して、中年初期から損傷されているということです。年齢の増加は避けられませんので、血圧を下げてささやかに抵抗するしかないようです。

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