以下は、記事の文章そのままです。
毎日マルチビタミン剤を摂取することで男性のがんリスクが低下するようだ、という米国ブリガム婦人病院からの研究報告。世界初となるこの研究は、2012年10月17日に第11回AACRがん予防研究の最前線国際会議で発表され、同日『米国医学会誌』オンライン版に掲載された。
50歳以上の15,000名近い男性を対象に、マルチビタミンまたはプラセボを10年以上摂取してもらった。がんの罹患率は、参加者の自己申告に基づき、研究者が医療記録からそれを確認した。
その結果、研究チームは、マルチビタミン摂取群において、がんの全罹患率が8%低下していることを発見したという。さらに、がんによる死亡率も低下していた。
研究チームでは、マルチビタミン中の、どのビタミン、ミネラルが効果的だったのかは現時点では不明としている。また、今回の結果が女性や50歳以下の男性にも適用されるものかどうかも不明としている。
元論文のタイトルは、”Multivitamins in the Prevention of Cancer in Men”です(論文をみる)。
以下は、論文要約の抜粋です。
背景と目的:マルチビタミンは、サプリメントの最大成分で、アメリカ人成人の1/3がが摂取している。これまでの観察研究では、全体的あるいは部位特異的ながん発生率や死亡率への影響は不明である。長期のマルチビタミン投与ががんリスクあるいはがんによる死亡を減らすかどうかを調べることが本研究の目的である。
結果:参加者は14,641名の50歳以上の男性(平均64.3歳)で、その中1,312名はがんの既往がある。フォローアップ年11.2年間(中央値)で、2669名でがんを確認した(前立腺癌が1373名、直腸結腸がんが210名)。
プラセボ群に比べ、マルチビタミン連日服用群は総がん発生率が統計学的に有意に減少していた(multivitamin と placebo groupはそれぞれ 17.0 と 18.3 イベント/1000人年;hazard ratio [HR],0.92;95% CI, 0.86-0.998; P = .04)。しかし、前立腺がん、直腸結腸がんで、あるいは他の部位のがんでも2群間に有意差は認められなかった。
さらに、がん死亡率リスクに関しても有意な差を認めなかった。また、がんの病歴無しの13329名の男性においても有意な差を認めなかった。
上の記事にある「研究チームは、マルチビタミン摂取群において、がんの全罹患率が8%低下していることを発見したという。」という記述は、ハザード率0.92という数字に基づいているのだと思います。しかし、1年あたりの全罹患率はプラセボ群1.83%、マルチビタミン群1.7%で、マルチビタミン群で0.13%低下しただけです。
前立腺がんなどの個別がんについては、有意差が認められていません。さらに、参加者の約91%を占めるがんの病歴がない男性については有意差が認められていません。
これらを合せて考えれば、マルチビタミン連日投与の効果はあるとしてもごくごくわずかです。
また、記事に書かれている「さらに、がんによる死亡率も低下していた。」というのは明らかに誤りです。論文には、”There was no significant difference in the risk of cancer mortality”と書かれています。週刊朝日ほどではないかもしれませんが、とてもひどい記事です。サプリ屋の回し者かもしれません。
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