スポーツドリンクの真実―水よりも有効であるという確かなエビデンスはない

The truth about sports drinks
BMJの特集記事です。今のスポーツ界に流布している水分補給やスポーツドリンクについての「常識」が、ペプシ(Gatoradeを買収した)、コカコーラ、GSKなどのスポーツドリンクメーカーから資金提供された研究者によって作られたものであるという記事です。以下にその要約を紹介します。


スポーツドリンクは、スポーツやエクササイズをする人にとって必須のものであるという認識が近年強くなってきているが、実際にはこれを裏付けるエビデンスはない。Deborah Cohenは、「水分補給科学」マーケットを拡大させ続けているスポーツドリンク産業とアカデミアとの結びつきについて調査した。以下は、その報告である。

運動の前や最中に水分補給が重要で、どんなドリンクが有効かというメッセージが巷のメディアに溢れている。しかし、このような「水分補給ドグマ」が登場したのは最近のことで、1970年代にはマラソンランナーは水を飲むと走りが遅くなるとして、給水は推奨されていなかった。当時はまだ給水の科学的根拠はなかったのだ。

何が「水分補給ドグマ」を普及させたのか?BMJが調べたところ、ドリンク企業が水分補給関連研究者に研究資金を提供し始めたことが、そのきっかけであることが明らかになった。これらの研究者たちが論文を書き、スポーツ組織にアドバイスをしてガイドラインなどを作ることで、徐々にこのドグマが一般大衆にも浸透し、その結果、一般大衆に「脱水恐怖症」が蔓延したのだ。

ドリンクメーカー各社は、水分補給がトレーニングと同等にパフォーマンスに影響するとして、その重要性を強く宣伝した。ドリンクメーカーに資金提供されたスポーツ研究所が、科学的根拠もなくチームの敗因を脱水だと結論することもあった。

さらに、各メーカーはスポーツドリンクの「科学的根拠」のために、科学者達への資金提供、リゾート地での国際シンポジウムの開催、スポーツ科学雑誌の編集者の抱え込みなどを行い、水分補給の科学的根拠を「確立」した。利益相反そのものである。

実際には、「のどの渇き」に従って水分を摂るので十分であるのに、これらの科学者のアドバイスに基づいて、ドリンクメーカーは、「のどが渇いた時に水分を摂るだけでは不十分」、「運動の前に十分な水分補給が必要」などのコピーを流して「水分補給ドグマ」を浸透させていった。

さらに、スポーツドリンク産業は運動による脱水に対しては、単なる水よりもスポーツドリンクが優れているということを、科学的な根拠もなく宣伝しており、これには学童レベルの子供達も巻き込まれている。また、スポーツドリンクに含まれる糖分による肥満も問題であるが、これもあまり議論されないようにメディアなどを誘導している。


同じ記事は、「内科開業医のお勉強日記」でも「スポーツドリンク:商用主義により作られた幻想 ・・・ 熱中症予防の嘘、スポーツ・パフォーマンスへの効果など」としてとり上げられています(記事をみる)。

上記のブログでは、「“ Disease mongering”(病気を利用して製薬会社が金儲けすること)はよく知られているが、『脱水』や『運動』において、世間一般を恐怖に陥れるScare mongeringをネタに金儲けするインチキ商売がこの分野で行われ続けてきた。」という部分が引用され、「熱中症予防に関して、患者からアドバイスを求められたとき、『OS-1のような・・・』とかそのエビデンスを検討もせず、助言してないだろうか?」と問いかけています。

今後は、BMJの上記記事に対するスポーツ科学者や協会などの対応、マラソンやサッカー競技での水分補給がどうなるかなどに注目したいと思います。

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