以下は、記事の抜粋です。
微量の血液を採取して大腸がんの有無を診断する方法を発見したと、吉田神戸大准教授らの研究チームが、プロスワン誌に7月13日までに発表した。がんでの死亡率で、大腸がんは女性の1位、男性の3位となっており、研究チームは「近い将来の実用化を期待したい」としている。
吉田准教授らは、大腸がん患者と健康な人それぞれ60人の血液を調査。がん患者の方に多く検出される物質を複数突き止めた上で、安定性や検査の精度を考慮して、アミノ酸の一種「アスパラギン酸」など4種類を、がんの有無を調べる指標「バイオマーカー」として絞り込んだ。
従来のマーカーでは、早期がんの発見は難しかった。便に血液が混ざっているかどうかを調べる検査は、継続して受けていれば有効だが、1回のみではがんを見逃す可能性がある。今回発見した4種類の物質を調べれば、早期のものも含め、がんを8割方発見できるという。
元論文のタイトルは、”A Novel Serum Metabolomics-Based Diagnostic Approach for Colorectal Cancer”です(論文をみる)。
GC/MSを使った血清メタボローム解析です。各種代謝産物の日内変動や日間変動を調べた後で、結腸直腸がん患者と年齢や性をあわせた正常ボランティアとで比較しています。これで、4つの代謝産物(2-ヒドロキシ酪酸、アスパラギン酸、キヌレニン、シスタミン)を同時に測定すれば、結腸直腸がんを予測できるとしています。
トレーニングセットにおけるこれら4つの代謝産物による感度、特異性、正確度は、いずれも85%で、CEA(それぞれ、35.0%、 96.7%、65.8%)やCA19-9(それぞれ、16.7%、100%、58.3%)よりも優れているとしています。検証セットでも記事のようにそれぞれ、83.1%、81.0%、82.0%とトレーニングセットと同様の結果が得られたそうです。
さらに、リンパ節転移や遠隔転移のないステージ0-2のがんでも82.8%という高感度を示したそうです。これらの結果に基づいて著者らは、このような代謝産物4つの測定が結腸直腸がんのあたらしいスクリーニング法になる可能性があるとしています。
「『バイオマーカー』として絞り込んだ」とされる4つの代謝産物(2-ヒドロキシ酪酸、アスパラギン酸、キヌレニン、シスタミン)は、非常にありふれたものです。どのようなメカニズムでこれら4つの代謝産物が結腸直腸がんで増えるのか?本当に他の疾患、特に他のがんとの鑑別ができるのか?などと考えました。
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