「尿に糖を出して糖尿病を治療する」次世代の糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬

次世代の糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬
以下は、記事の抜粋です。


新しい糖尿病治療薬として「SGLT(ナトリウム依存性グルコース輸送担体)2阻害薬」の研究開発が活発化している。SGLT2阻害薬は、インスリンを介さない新しい作用メカニズムをもち、強い血糖低下作用に加え、低血糖リスクが低いことや、他の経口糖尿病薬ではみられていない体重減少作用が期待されている。

SGLTは、細胞内外のナトリウムの濃度差を利用して、ブドウ糖を細胞内に取り込む。SGLTのサブタイプとして、主に消化管、心臓、骨格筋、肝臓、肺、腎臓の近位尿細管にあるSGLT1、腎臓の尿細管にあるSGLT2などが確認されている。

腎糸球体でろ過された原尿には、血しょうと同じ濃度のブドウ糖が含まれているが、それをナトリウムとともにに尿細管細胞内に再吸収するのがSGLT2。尿糖を増やせば血糖が減って、膵でのインスリン分泌の負担が軽くなるのではないかということをコンセプトに、SGLT阻害剤の開発が進められてきた。

SGLT2阻害薬の開発は世界各国で進められており、糖尿病治療薬の新たなターゲットであるが、海外を含めてまだ発売されたものはない。現在、国内外で臨床試験が実施され、安全性、有効性についてより多くの症例の集積が進められている。


SGLT2阻害薬については、約2年前にこのブログで紹介しました(記事をみる)。その後も開発が盛んなようです。

以下は、先日の第72回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会で発表されたベーリンガーインゲルハイムのSGLT2阻害薬empagliflozinのプレス・リリースです。

New data demonstrate sustained glucose reduction and weight loss up to 90 weeks with investigational SGLT-2 inhibitor, empagliflozin

ベーリンガーインゲルハイムのempagliflozinというSGLT2阻害薬10mgまたは25mg(単独療法またはメトホルミンへの追加療法)、メトホルミン単独療法、シタグリプチン(DPP-4阻害薬)のメトホルミンへの追加療法を比較した。90週目の時点でのHbA1c値及び体重のベースラインからの平均変化量は、メトホルミン単独療法(-0.56%、-1.28 kg)と比べて、empagliflozin 10mg単独療法(-0.34%、 -2.24 kg)empagliflozin 25mg単独療法(-0.47%、 -2.61 kg)だった 。empagliflozinまたはシタグリプチンをメトホルミン基礎治療に追加した場合、HbA1c値及び体重のベースラインからの平均変化量は、シタグリプチン(-0.40%、-0.41kg)と比べて、empagliflozin 10mg(-0.34%、 -3.14 kg)、empagliflozin 25mg(-0.63%、 -4.03 kg)だった。

現在国内では、ダパグリフロジン(ブリストル・マイヤーズスクイブ/アストラゼネカ)、カナグリフロジン(田辺三菱)、ルセオグリフロジン(大正)、イプラグリフロジン(アステラス/寿)、トホグリフロジン(中外)の5品目のSGLT2阻害薬が第III相段階に突入しているそうです。これまでの臨床試験成績を見ると、有効性や安全性に大きな差は見られず、横一線というところだそうです。

副作用はわずかですが、尿糖が高いために外陰部の炎症が増加することが報告されています。これらの「尿に糖を出して糖尿病を治療する」興味深い薬物がいつ発売されるのか、楽しみに待ちたいと思います。

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