Ferid Murad, Sept. 14, 1936-Sept. 4, 2023

Ferid Murad Sept. 14, 1936-Sept. 4, 2023
以下は、Palo Alto Onlineに掲載された追悼記事の和訳です。

ノーベル賞受賞の科学者、薬理学者、医師であり、心臓血管医学の分野で画期的な発見をしたフェリド・ムラド博士の輝かしい人生と功績。

ムラド博士は2023年9月4日、メンローパークの自宅で静かに息を引き取った。

ムラド博士は1936年、インディアナ州ホワイティングでアルバニア移民の父とアメリカ人の母の間に生まれた。家業のレストランで働きながら育ち、仕事に対する強い倫理観を植え付けられた。1958年、インディアナ州グリーンカッスルにあるデポー大学のレクター奨学生として卒業。その後、オハイオ州クリーブランドのケース・ウェスタン・リザーブ大学で医学博士号と博士号を取得した。スタンフォード大学では1986年から88年まで医学部長代理を務め、テキサス大学ヒューストン校では統合生物学・薬理学・生理学部長および分子医学研究所所長として研究を続けた。その後、ジョージ・ワシントン大学の教授を経て、スタンフォード大学のパロアルト退役軍人病院に戻った。

1970年代初頭、ムラド博士は心臓血管系における一酸化窒素（NO）の役割に関する先駆的な研究を開始した。NOはそれまで不活性な気体と考えられていたが、ムラド博士は血管を弛緩させ、血流を改善する上で重要な役割を果たしていることを発見した。この発見は、心臓病やその他の循環器系疾患の治療薬の開発につながり、ムラド博士は1998年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。

ムラド博士の研究は亡くなるまで続けられ、医学界に多大な影響を与え、世界中の何百万人もの人々の生活を改善した。彼の研究は、心臓病、肺高血圧症、COPD、鎌状赤血球症、腎不全、勃起不全の人々の命を救い、生活の質を向上させるのに役立った。また、がん、脳卒中、新生児の遷延性肺高血圧症に対する新しい治療法の開発にもつながっている。

科学的業績に加え、ムラド博士は熱心な教師であり指導者でもあった。彼は数え切れないほどの学生（世界中から）や同僚を教育し、常に自分の知識や専門技術を喜んで分かち合った。また、愛情深い夫であり、父親であり、祖父でもあった。

ムラド博士は心臓血管医学の分野における真のパイオニアであり、その業績は何世代にもわたって患者に恩恵を与え続けるだろう。彼は真の先見者であり、献身的な医師であった。彼の遺産は、今後何年にもわたり、次世代の医療専門家を鼓舞し続けるだろう。

Ferid Murad氏はアルバニア系移民の子供のため、本名を英語では呼びにくいので皆からは、アメリカ人によくある”Fred”という名前で呼ばれていました。Fredは、私の名前も長くて呼びにくいと言って、”Tak”と呼んでいました。

また、子供のころ家業のレストランで嫌というほど皿を洗ったのでもう一生したくないと言って、家事はすべて奥さんのキャロルにさせると言っていました。また、写真でもパイプを吸っていますが、心臓血管医学に貢献したくせにタバコを止められない人でもありました。奥さんは私に、そのせいでChairman of Medicineになれないんだと言っていました。

ノーベル賞に関連するNOの仕事をしたのはバージニア大学で、スタンフォード大学には1981年か1988年まで在籍していました。彼の研究室はスタンフォード大医学部の関連病院のパロアルト退役軍人病院内にあり、私はそこに1984年～1986年の2年間、彼のpost doctoral fellowとして働いていました。上の写真は当時の写真だと思います。当時の退役軍人病院にはベトナム戦争で足を失った元軍人などが多く入院していました。軍の施設なので写真撮影などは禁止されていましたが、研究費は別枠で来ていたようで、裕福な研究室だったようです。

当時は、京大の沼先生の研究室から、ニコチン受容体などのcDNAクローニングの論文などがNature誌に続々と掲載されていて、沼先生の研究室では、実験施設を3交代制で使って24時間研究しているらしいと言ったら、Fredが自分はそんなことはしたくない、”Science should be fun.”と言ったのは今でも記憶に残っています。

タバコがやめられなかったり、株への投資をしたり、ポルシェにのったり、研究についても的外れなアイディアをうるさく提案したり、それでも自由に研究させてくれたり、、、とても俗っぽい人で、当時私が持っていた「学者」のイメージを破壊してくれました。冥福を祈ります。

こちらにも記事があります。以下は、その記事からの抜粋です。