サバクトビバッタの特異な繁殖行動を解明

サバクトビバッタの特異な繁殖行動を解明 -農薬使用量の減少に繋がる効率的な防除が可能に-
以下は、記事の抜粋です。


サバクトビバッタ(以下、バッタ)は、西アフリカからインドにわたる半乾燥地域に生息していますが、しばしば大発生し、深刻な農業被害を引き起こします。2020年から2021年にかけて、東アフリカと南アジアで大発生し、深刻な農業被害が報告されています。バッタの発生地は広大で、特に成虫は長距離飛翔するため、農薬散布による防除は困難です。国際農研では、バッタの被害の軽減を図るため、バッタの生態に基づいた効率的な防除技術の開発を目的とした研究を、第4期中長期計画(2016-2020年度、病害虫防除プロジェクト) から第5期中長期計画(2021-2025年度、越境性害虫プロジェクト) にかけて実施しています。今回は、農薬使用量の削減に繋がる、バッタの繁殖行動に関する国際農研の研究成果について紹介します。

サハラ砂漠で野外調査を行った結果、性成熟したバッタの成虫は、雌雄どちらかに性比が偏った集団を形成していました。メスに性比が偏った集団では、ほとんどのメスは卵巣発達中で、交尾していませんでした。一方、オスに性比が偏った集団では、メスは産卵直前の大きな卵を持っており、ほとんどが交尾していました。詳しく調査したところ、日中、オスの集団に産卵直前のメスが飛来して交尾し、夜間にペアで集団産卵していました。バッタは交尾中、オスはメスの背中に乗ってしがみつくため、メスは飛んで逃げることができず、鳥等の天敵から襲われやすくなります。雌雄が同居していると、オスは執拗にメスに交尾を迫るため、卵巣発育中のメスはオスと別居することで交尾を避け、産卵するときだけオスにガードされて安全に産卵していると考えられます。雌雄が集団別居することで雌雄間の対立を解消しつつ、パートナーに効率よく出会えていると推察されます。以上の結果から、集団産卵中のペアはその場に数時間留まるため、日中、オスの集団を発見してもすぐに防除せず、夜間の集団産卵のタイミングを見計らって防除することが効率的であることが明らかになりました。バッタの生態を応用することで、必要以上に農薬を使用しない、環境や健康に配慮した防除に結び付くことが期待されます。

本記事は、令和3年10月12日のプレスリリースを改変・追記し再掲したものです。
サバクトビバッタについては、国際農研に寄せられた質問に対する回答を中心に解説したページを公開しています。

参考文献
Maeno, K.O., Piou, C., Ould Ely, S., Ould Mohamed, S., Jaavar,M.E.H., Ghaout, S. and Ould Babah Ebbe, M.A.Density-dependent mating behaviors reduce mating harassment in locusts (2021) PNAS. https://doi.org/10.1073/pnas.2104673118


前野さんの書かれた「バッタを倒しにアフリカへ」はとてもおもしろく読ませていただきました(本の紹介ページをみる)。この論文を紹介する彼のブログもとてもおもしろいです(ブログをみる)。

オスだけの群れとメスだけの群れが天敵などの目を盗んで夜中に出会って、交尾中に夢中になり無防備になるところを狙って一網打尽にするということかと。バッタに快感があるのか知りませんが、気持ちよく死んでもらえるかも。オスは「腹上死」ではなくて「背上死」ですね。

こういう研究者が生活の不安なく研究できる状況を急いで作らないと日本の科学は終わります。

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