Inverse association between cancer and Alzheimer’s disease: results from the Framingham Heart Study
以下は、論文要約の抜粋です。
目的:フラミンガム心臓研究においてアルツハイマー病(AD)発症リスクとがんの関連を調べる。そして、ADの有無による発がんリスクを推測する。
方法:アメリカのフラミンガム心臓研究から、スタート時点(1986-90)においてがんの既往がなく認知症のない65歳以上の1278人を対象に、がんとADの関連をコホート研究で調査した。
結果:平均10年の追跡により、221人がADと診断された。がん生存者はAD発症リスクが低かった(ハザード比0.67)。喫煙関連がん生存者((0.26)は非喫煙関連がん生存者(0.82)よりもADリスクが低かった。対照的に、喫煙関連がん生存者は脳卒中リスクが高かった(2.18)。逆に、AD発症者では非発症者よりも発がんリスクが低かった(0.39)。すべての認知症を含めても発がんリスクは低かった(0.44)。
結論:がん生存者はADリスクががんを発症しない者よりも低く、AD患者は発がんリスクが低い。ADリスクは喫煙関連がん生存者で最低であり、これは生存バイアスでは説明できなかった。このような逆相関パターンはがんとパーキンソン病の間にも認められるので、これらの結果はがんと神経変性の逆相関を示唆している。
ADでがんが少ないというのは、認知機能が落ちたためにがんの発見頻度が低下しただけではないかとも考えられますが、すべての認知症を含めるとリスクが増加したことは、AD特異的にがんリスクが低下していることを示唆していると思います。
このような現象の理由として、アポトーシスのおこり易さが考えられています。即ち、アポトーシスをおこし易いことは、化学療法によってがん細胞が死に易いのでがん治療にはプラスに働きがん生存者を増やすが、神経細胞が死に易い場合はADになり易いのではないかという考えです。また、がん治療に用いられる化学療法薬がADを防ぐのではないかなどとも考えられています。どちらも推測のレベルです。
症例数がまだ少ないので、がんのタイプ別でのADとの関係まではわかりません。このような問題や上述の化学療法薬とADの関係などが今後の課題になると思います。がんかADかというのは究極の選択ですが、がん以外で早く死ぬ以外、避けられない選択でもあります。もちろん、ADとがんの両方になる可能性もあります。
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