丸川五輪相と加藤官房長官のニューイングランドジャーナル論文への「反発」

丸川五輪相 米専門家グループ“感染対策が不十分”に反論
以下は、記事の抜粋です。


アメリカの公衆衛生の専門家グループが、東京オリンピック・パラリンピックの感染対策が不十分だとする見解をまとめたことについて、丸川担当大臣は、記者会見で「明確な事実誤認や誤解に基づく指摘が見受けられる。論文では、アスリートへの検査頻度が明確でないとしているが、感染防止のためのルールをまとめた『プレーブック』には、原則として毎日検査を実施すると明示してある」などと反論しました。

そのうえで「論文は大会の中止を求めるものではなく、開催するための緊急の行動が必要だという趣旨で書かれているものだと認識している。国内外の専門家に対策が正確に伝わるよう、丁寧に説明をしていきたい」と述べました。


加藤官房長官は5月27日の記者会見で、「(対策は)最新の知見を踏まえ、科学的に内容の更新も行われている」と反論したそうです。丸川氏と加藤氏のコメントは「反論」ではなく、単なる「反発」であることが以下の論文をみると良くわかります。

以下は、米医学誌に掲載された”Protecting Olympic Participants from Covid-19 — The Urgent Need for a Risk-Management Approach(Covid-19からオリンピック参加者を守る—リスク管理アプローチの緊急の必要性)”というタイトルの論文には、「我々は、WHOがこれらの要因を検討し、東京オリンピックのリスク管理方法について助言するために、労働安全衛生、建築・換気工学、感染症の疫学の専門家およびアスリートの代表者を含む緊急委員会を直ちに招集することを提言する。」と書かれていて、次のようなまとめの表がついています(論文をみる)。なお、この論文はあくまでオリンピック参加者を守るための感染対策についてで、日本国民の感染対策については何も書かれていません。

公衆と運動選手の健康を保護するためのベストプラクティス」とIOCの現在の計画との比較。*

原理 ベストプラクティス IOCプレイブックガイドライン
公衆衛生の強調 プレイヤー協会、統治機関、専門家を含むCovid-19諮問委員会を設立する。アウトブレイクに迅速に対応するためのプランBを持っている プレイヤー協会の関与なし。アウトブレイクが発生した場合のプランBもない。リスク評価が行われていない
アスリート保護 アスリートへの強制的な権利放棄はしない。トレーニングおよび競技期間のための完全で包括的な保険制度 アスリートの競技への参加は自己責任。保険によるカバーは限定的
明確に定義された責任 安全な海外旅行の保証。それぞれのスポーツでの安全保護措置 出発前のテストだけでは不十分。それぞれのスポーツでの安全対策は十分に検討にされていない
効果的な検査、ヒトとヒトの接触追跡と分離ポリシー アスリートのための少なくとも毎日のRT-PCR検査。抗原検査による補充。ヒトとヒトが近づかないように監視するためのウェアラブル技術。指定ホテルによる隔離 テスト頻度に関する詳細が不十分。ウェアラブル技術ではなく、スマートホンによる接触追跡のみ。不十分な発熱検査に重点を置いている。ホテルでの隔離に関する詳細が不十分
適切な治療とケア カスタマイズされた治療およびリハビリプログラム。心臓スクリーニングは必須、メンタルヘルスサポートへの現場でのアクセス 治療およびリハビリに関する詳細が不十分。アスリートのメンタルヘルスや健康サポートについての言及はない
効果的なPPEにいつでもアクセスできる バスなどのリスクの高い状況に対応できる医学的に承認されたマスクの配布、フィルター付きフェイスピース型人工呼吸器など アスリートは自分のマスクを持参
アスリート教育 プレイヤー協会と協力して、わかり易いインタラクティブな資料を作成 資格と訓練内容が不明確な「Covid-19リエゾン役員」の役割を強調
大会での安心・安全な生活 アスリートのための個室。旅行とアクセスの特別な措置。カフェテリアを含むすべての屋内環境の人数制限。適切な換気とCovid-19検査体制 アスリートはルームシェア; 共有スペースでのソーシャルディスタンス確保体制の欠如; 暖房・換気・空調システムのレビュー、適応、および変更に関する情報の欠如

コメント

タイトルとURLをコピーしました