アストラゼネカ社新型コロナワクチン どのような対象者に接種すべきか
以下は、記事の抜粋です。
5月21日、新たにモデルナ社とアストラゼネカ社の新型コロナワクチンが承認されました。このうちアストラゼネカ社のワクチンについては当面は接種を見送り、引き続き対象年齢などを慎重に検討するという方針が示されました。これは、現時点では的確な対象がどのような人なのか、現時点では判断が難しいということだと思われます。
「70%でも効果は十分」と言われても、一方で「こちらには90%以上のワクチンもあります」と言われると、あえて70%を選ぶ人はいないでしょう。また、血栓症の問題についても10万人に1人と極めて稀であり、致死率2%の新型コロナが予防できることを考えれば接種する意義はあると考えられます。欧州医薬品庁も「稀な血栓症よりも予防効果というメリットの方が上回る」という声明を発表しています。それでも、「アストラゼネカ社のワクチンはちょっと・・・」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
では、アストラゼネカ社の新型コロナワクチンが推奨されるのはどういった方でしょうか?間違いなく推奨される対象としては、
・mRNAワクチン接種後にアナフィラキシーを起こした人
・PEGにアレルギーのある人
といったmRNAワクチンが接種できない人でしょう。こうした方々にとっては、アストラゼネカ社のワクチンは大事な選択肢となるでしょう。
また、
・薬剤アレルギーのある人
・アナフィラキシーの既往のある人
といったmRNAワクチンでアナフィラキシーを起こしやすい人にとっても、相対的にアストラゼネカ社のワクチンの方が安全性が高くなるでしょう。
アストラゼネカ社のワクチンが承認されたことは、こうした方々にとって非常に大きな意味があります。
また、流行状況によって、アストラゼネカ社のワクチンは意義が変わってくるとも考えられます。低い流行状況(毎月の感染者が10万人あたり55人)のときには、特に若い世代ではワクチン接種によって防げる新型コロナによる死亡者数よりも血栓症の事例の方が多くなるため接種のメリットよりもデメリットが上回ると考えられます。また、高い流行状況(毎月の感染者が10万人あたり886人)のときには、30代であってもワクチン接種によって防げる新型コロナによる死亡者数の方が血栓症の事例よりも多くなり、年代が上がるほどメリットの方が上回るようになります。
このように、特に高齢者においては、新型コロナの国内での流行状況によっては接種するメリットが大きくなります。
ファイザー社、モデルナ社のmRNAワクチンが十分に確保されている状況においては、ほとんどの方にとっては、より効果の高いこの2つのワクチンを接種する方が良いと思われますが、今後の流行状況やワクチンの在庫によっては、年代を絞ってアストラゼネカ社のワクチン接種を進める、という方針も検討されるべきでしょう。
これらの承認によって、現在の日本ではファイザー、モデルナ、アストラゼネカという3つの新型コロナワクチンの選択肢ができたことになります。mRNAワクチンの2つで十分な感じがするので、どうしてアストラゼネカのものまでいるのかと思っていたので、興味深く記事を読みましたが、アストラゼネカを残す理由としては、選択支が増える以外には「PEGにアレルギーのある人」だけが納得できるものでした。
米CDCの発表によると、5月18日までにアナフィラキシーが表れたのは、ファイザー製では約994万回の接種で50回、米モデルナ製では約758万回で21回。それぞれ約20万回に1回、約36万回に1回の割合でした。CDCは、このアナフィラキシー反応の原因としてワクチンに添加されているポリエチレングリコール(PEG)の可能性が高いと報告しました(記事をみる)。
2社のmRNA ワクチンは、脂質ナノ粒子に mRNA を封入して、生体での免疫送達効率を高めています。脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG2000)修飾により安定化されています。PEG は無毒で、医薬品としては慢性便秘の瀉下薬や大腸検査の前処置や、皮膚用のクリームなどにも添加されています。また、PEG化インターフェロンαや PEG 化 G-CSF 製剤などは、効力を延長したり、副作用を軽減するためにPEG化されています。
PEG は希にアナフィラキシーを発症することがありますが、上記のように、PEGは比較的身近な軟膏・薬剤や日用品にも多用されているので、PEG アナフィラキシーを問診などで予見することは
極めて困難です。CDCでは「mRNAワクチンの成分(PEGなど)に対して、重度もしくは即時型のアレルギー反応がある場合は接種不可」としました。また、ワクチンの成分には含まれないが、ポリエチレングリコールと交差反応性を持つ 、「ポリソルベート(乳化剤等としてチョコレート等に含まれる)」にアレルギーがある場合も不可としました。一方、その他のワクチンや注射薬に対してのみ即時型のアレルギーを示す人は接種不可とせず、希望する人にはかかりつけ医との相談のうえで接種を許可しています。
アストラゼネカ製ワクチンは、mRNA ワクチンではなく、ヒトに対して病原性のないとされるウイルスに新型コロナウイルスの遺伝子を一部組み込んだ「ウイルスベクターワクチン」です。ウイルスベクターワクチンは、これまでエボラウイルスに対するものしか実用化されていません。PEGを含まずアナフィラキシーの心配は少ないと予想されます。
ファイザーとモデルなのワクチンを投与する場合は、PEG(ポリエチレングリコール)やポリソルベートに対するアレルギーに注意ましょう。化粧品やチョコレート菓子にアレルギーのあるヒトは注意です。
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