以下は、記事の抜粋です。
FDAは11月18日、抗がん剤アバスチン(一般名ベバシズマブ)の転移性乳がんへの適用を取り消した。2008年2月、緊急性が高い薬の申請に適用されるFDAの迅速承認制度のもと追加の臨床試験を実施するとの条件付きで承認されていたが、結果として生存率や生活の質の向上には効果がないと判断した。大腸がんなど、それ以外のがんへの適用については「これまで通り何ら変わりない」と説明している。
アバスチンは日本でも07年に大腸がんに対して承認され、今年9月には手術不能または再発乳がんに対して追加承認を受けている。
朝日などの日本のメディアは上記のようにマイルドに伝えていますが、ニューヨーク・タイムズなどはFDAのコミッショナーDr. Margaret A. Hamburgの”clinical trials had shown that the drug was not helping breast cancer patients to live longer or to meaningfully control their tumors, but did expose them to potentially serious side effects like severe high blood pressure and hemorrhaging”(「臨床試験の結果、アバスチンには患者の延命効果や腫瘍の制御効果はなく、むしろ患者を高血圧や出血などの潜在的に重大な副作用に曝すことが明らかになった」)を掲載してセンセーショナルに伝えています(記事をみる)。
アバスチン(一般名:ベバシズマブ)は、血管内皮細胞増殖因子 (vascular endothelial growth factor, VEGF) に対するモノクローナル抗体です。VEGFの働きを中和(阻害)することにより、血管新生を抑えたり腫瘍の増殖や転移を抑えたりする作用を持つとされています。異常な腫瘍血管を正常化することで併用する抗がん剤が効率よく届くようにする作用があるなどともいわれています。
日本で承認されている保健適応は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」、「扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」と「手術不能乳癌又は再発乳癌」です。不思議なことに乳がんへの適応は、今年の7月にFDAの諮問委員会がアバスチンの乳がん治療に対する承認取り消しを進言した後で承認されました。今後の展開が注目されます。
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コメント
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いつも興味深く拝見しています。
乳がんが社会問題であるアメリカにしてみれば大問題だからなんでしょうかね。
癌も組織によって理論上の効果が期待できないのが不思議でも有りやっかいでもありますね。