善玉コレステロールを増やす薬物が第2相で好成績

Novel HDL-Booster Impressive in Early Study

以下は、記事の抜粋です。


HDLを増加させてLDLを低下させるという研究段階の薬物evacetrapibについて、単独使用およびスタチンとの併用は安全であろうという結果が得られた。ちなみに、先行のCETP阻害薬torcetrapibは、この安全性確認段階で消えた。

Cleveland ClinicのStephen J. Nicholls氏によると、臨床試験第2相において、evacetrapibは40mgから500mgまでの単独使用で、プラセボと比較してHDLを54%から129%増加させ、LDLを14%から36%減少させた。この結果は、11月15日にJAMAのオンライン版に掲載された。

さらに、100mgのevacetrapibを40mgのsimvastatin (Zocor®)、20mgのatorvastatin (Lipitor®)、あるいは10mgのrosuvastatin (Crestor®)などの広く使用されているスタチンと併用した場合は、スタチン単独よりもHDLを79%から89%増加させ、LDLを11%から14%低下させたという。これらの結果は、スタチンとの併用が可能かつ有効であることを示唆している。

ただし、善玉コレステロールであるHDLレベルの著しい上昇という結果が、臨床的なベネフィットに直結しているかどうかはまだわからない。第3相の試験が必要だ。
本試験では、398例の患者しか調べていないが、肝臓、腎臓、筋肉などへの毒性は認められなかった。また、先行CETP阻害薬であるtorcetrapibは、効果的にHDLを上昇させ、LDLを低下させたが、血圧も致死的に上昇させる例があった。今回のevacetrapibには、このような副作用は認められなかった。

anacetrapibというCETP阻害薬も第2相までの臨床試験をクリアしている。今後の展開によっては、25年間ぶりに新しい動脈硬化治療薬が登場する可能性がある。


元論文のタイトルは、”Effects of the CETP Inhibitor Evacetrapib Administered as Monotherapy or in Combination With Statins on HDL and LDL Cholesterol”です(論文をみる)。

High-density lipoprotein cholesterol (HDL-C)は、「善玉コレステロール」とよばれ、心血管リスクを下げる因子と考えられています。しかし、HDL-Cを増加させて心血管イベントや死亡率を減少させる薬物の開発は困難を極めてきました。

スタチン、フィブレート、ナイアシン(vitamin B3)などの既存薬がHDLを増加させることが知られています。HDLを上げる薬物をスタチンと併用することで、心血管リスクなどに対する臨床効果が向上するかどうかなどの問題は未解決です。

現在注目を集めているのは、本論文で使用されているcholesteryl ester transfer protein (CETP)阻害薬とよばれる薬物です。CETPはHDL-CからLDL-Cやトリグリセリドへコレステロール・エステルの転移を促進する血清タンパク質です(下図参照)。CETP阻害薬は、この反応を阻害して血中HDL-Cを増加させます。

記事にも書かれているように、最初に臨床試験に入ったCETP阻害薬であるtorcetrapibには、CETP以外に対する“off-target”効果があり、死亡率や心血管イベントを増加させました。しかし、本研究で用いられたevacetrapibには、血圧上昇、アルドステロンレベルへや肝機能への影響は認められず、torcetrapibで問題になった安全性については大丈夫のようです。

記事に書かれていたanacetrapib以外にも、dalcetrapibという薬物も第3相臨床試験に進んでいるそうです。25年ぶりの新薬登場に期待したいと思います。

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