統合失調症の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス
臨床の現場でどのような薬が使われているか良くわかります。以下は、記事の抜粋です。
従来の統合失調症ガイドラインは、臨床的に重要な問題を解決するための方法を必ずしも提供しているわけではない。慶應大学の櫻井氏らは、精神科専門医を対象に、統合失調症の治療オプションに関する調査を行った。
日本臨床精神神経薬理学会の認定精神科医141人を対象に、統合失調症治療における19の臨床状況について、9段階で治療オプションの評価を行った(同意しない「1」~同意する「9」)。
主な結果は以下のとおり。
・抗精神病薬の第1選択薬は、主要な症状により以下のように異なっていた。
【陽性症状】
●リスペリドン:7.9±1.4
●オランザピン:7.5±1.6
●アリピプラゾール:6.9±1.9
【陰性症状】
●アリピプラゾール:7.6±1.6
【抑うつ、不安症状】
●アリピプラゾール:7.3±1.9
●オランザピン:7.2±1.9
●クエチアピン:6.9±1.9
【興奮、攻撃性】
●オランザピン:7.9±1.5
●リスペリドン:7.5±1.5
・顕著な症状のない患者の再発予防に対する第1選択薬として、アリピプラゾール(7.6±1.0)が選択された。
・社会的統合のために選択された薬剤は、アリピプラゾール(8.0±1.6)、ブレクスピプラゾール(6.9±2.3)であった。
・錐体外路症状の懸念がある患者に対する第1選択薬は、クエチアピン(7.5±2.0)、アリピプラゾール(6.9±2.1)であった。
著者らは「これらの臨床的推奨は、特定の状況における特定の抗精神病薬使用に関する専門医のコンセンサスを表しており、エビデンスとの間の現在のギャップを補完するものであろう」としている。
元論文のタイトルは、”Pharmacological Treatment of Schizophrenia: Japanese Expert Consensus”です(論文をみる)。
アリピプラゾールは、シナプス後D2受容体の弱い遮断作用だけでなく、シナプス前D2(自己受容体)の刺激作用(partial agonist)として働くことがしられています 。ドーパミン神経系の過活動では抑制し、低活動では活性化することでドーパミン神経系を安定化するといわれています(教科書をみる)。
リスペリドンは、セロトニンとドパミンが錐体外路系で拮抗することを利用して、中脳‐辺縁系のドパミン神経を遮断しながら、セロトニン受容体も遮断することで錐体外路症状が少ないといわれています。一方、漏斗‐下垂体系のドパミン神経は遮断するので、高プロラクチン血症や乳汁分泌をおこすことがあります(教科書をみる)。
オランザピンとクエチアピンは、ドパミンD2受容体群(D2、D3、D4)、5-HT2受容体、5-HT6受容体、アドレナリンα1、ヒスタミンH1受容体など多くの神経伝達物質受容体を遮断する。錐体外路症状をおこしにくいといわれています(教科書をみる)。
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