【抗肥満薬「コントレイブ」】FDA承認下りず‐追加試験を要求
以下は、記事の抜粋です。
武田薬品と米Orexigen Therapeuticsは、米FDA諮問委員会が承認を推奨していた抗肥満薬「コントレイブ(Contrave)」について、FDAから審査結果通知を受領したと発表した。現行の申請内容では承認しないとの通知で、FDAはコントレイブを長期投与した場合の安全性試験の実施を求めた。
コントレイブは、武田がOrexigenから導入した抗肥満薬。Orexigenが昨年3月に米国申請を行い、同年12月にはFDA諮問委員会が承認を推奨していた。さらに心血管リスクを評価する安全性試験の実施時期についても、「承認後推奨」が「承認前推奨」を上回るなど、審査目標終了日となる1月末での承認が待たれていた。
しかし、FDAは、現行の申請データでは長期投与時の安全性プロファイルに懸念があるとした上で、承認前に、心血管系リスクを評価する安全性試験の実施が必要と判断。審査結果通知で、武田とOrexigenに対し、コントレイブの追加試験を求めた。
コントレイブは、ナルトレキソン(naltrexone)とブプロピオン(bupropion)の合剤です。ナルトレキソンは麻薬拮抗薬の一種で、日本では使用が認められていませんが、米国では麻薬中毒やアルコール依存症の治療に用いられています。また、ブプロピオンは、ノルアドレナリンおよびドパミン再取り込み阻害薬(DNRI)の一種で、これも日本ではまだ承認されていませんが、欧米では、抗うつ薬として、あるいは禁煙補助薬として用いられています。
プレス・リリースによると、FDAの回答は、「申請が承認されるためには、十分な症例数と期間の長さをもつ、ランダム化二重盲検プラセボコントロール試験を行って、コントレイブ(naltrexone/bupropion)治療による肥満患者の心血管系有害事象が、リスク/ベネフィット分析結果に悪影響を与えないことを示さなければならない」でした。
この予想外のFDA決定に対応するために、Orexigenは約40%の人員削減を行うそうです(記事を見る)。本論と関係ないですが、40%で23人ですので、Orexigenは60人ぐらいのベンチャー会社だと思われます。欧米では、このようなベンチャーが新薬発見の重要な役割を担っています。
関連記事にも書いたように、抗肥満薬の新薬候補―ロルカセリン、Qnexa®、Contrave®―はすべて、FDA承認で苦労しています。ロルカセリンは、乳がんの発生リスクが指摘されたことと体重減少効果が弱いことが原因、Qnexa(フェンテルミン(phentermine)とトピラマート(topiramate)の合剤)は、習慣性と心機能リスクが原因です。
これら3つの新薬候補のFDAによる評価を比べると、Qnexaだけが臨床試験の追加が要求されていませんので承認が一番近いと思われます。日本企業との関係のなさがプラスに働いたわけではないと思いますが、不思議な決定です。
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