アビガン®(一般名:ファビピラビル)の有効性は確立したと言っていいのか??

30上 昌広氏は以下の記事で、「ファビピラビル(アビガン)の有効性は確立したと言っていい。」と断言しておられます。

アビガンは世界を救うコロナ治療薬となれるか
以下は、記事の中で氏がアビガン®(一般名:ファビピラビル)の有効性の根拠となるとされている箇所の全文です。


中国政府が発表した研究では、ファビピラビル(アビガン)を新型コロナウイルスの感染患者に投与し、別の抗ウイルス薬アビドールを投与した群と比較した。これもランダム化比較試験だ。

この研究では、ファビピラビル(アビガン)群の71%の患者が回復し、対照群の56%より統計的に有意に優れていた。解熱時間は2.5日と4.2日、咳が治まるまでの時間は4.6日と6.0日で、いずれもファビピラビル(アビガン)投与群のほうが良好だった。

また、同日には、深圳第三人民病院で新型コロナウイルスによる肺炎患者を対象とした臨床試験の結果も報告された。ファビピラビル(アビガン)とαインターフェロンを併用したところ、αインターフェロン単独、αインターフェロンとカレトラの併用より有効であったという内容だった。

医薬品の開発では、規制当局は独立した2つの臨床試験で結果が再現されることを求めるのが通常だ。ファビピラビル(アビガン)の有効性は確立したと言っていい


上氏が上の記事で紹介している2つ目の臨床試験は、私が以前に「アビガン®(一般名:ファビピラビル)は本当に新型コロナウイルスによる肺炎に効くのか?」で紹介した「アビガン、7日で7割回復 軽症者に中国チーム」という記事の根拠になった臨床試験と同じものです。しかし、この試験結果を報告する論文は、著者および/または編集者の要求により取り下げられました論文のサイトをみる)。撤回の理由はわかりませんが、アビガン®(一般名:ファビピラビル)が新型コロナウイルスによる肺炎に有効であるというエビデンスが1つ消えたことになります。

もう一つのエビデンスとされている論文は以下のものだと思われます。この論文は、まだ査読を受けていないプレプリントです。武漢のCOVID-19 240人に対するアビガンとアルビドール(ウミフェノビル)のランダム化比較試験です。以下の表の結果によると、症例全体では、7日間の臨床的軽快率には有意差無しでした(61.21% vs 51.67%; p=0.14)。ただし、軽症例(moderate patients)ではアビガンのほうが効果的だった(71.43% vs 55.86%; p = 0.02)という結果です。重症例や高血圧・糖尿病を合併した症例では2つの薬物の効果に差はありませんでした。これで、「有効性は確立した。」と考えますか?

アルビドール(ウミフェノビル)については先日のブログで紹介しました(ブログをみる)。

Favipiravir versus Arbidol for COVID-19: A Randomized Clinical Trial

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