COVID-19早期に特定の吸入ステロイド使用が有望か…シクレソニド(ciclesonide、オルベスコ®)による改善例

COVID-19早期に特定の吸入ステロイド使用が有望か…神奈川県立足柄上病院から3件の症例報告
Covid-19へのステロイド治療は支持されないとする論文が最近Lancet誌に発表されたところですが、今回用いられたシクレソニド(ciclesonide、オルベスコ®)は、ステロイドの持つ抗炎症作用だけではなく、強い抗ウイルス作用があるという事で、Covid-19の症例に対して用いられたようです(症例報告をみる)。以下は、記事の抜粋です。


足柄上病院の岩渕敬介氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症の初期から中期の患者3人にシクレソニド(オルベスコ®)を投与したところ、良好な経過を得たとの症例報告を3月2日発表した。シクレソニドは気管支喘息の適応を有する吸入ステロイド。今後、症例登録システムを立ち上げ、多施設共同の観察研究を行っていきたいとしている。

抗ウイルス作用は薬剤特異的な可能性
同病院は、2月28日までに8人の入院患者を受け入れている。COVID-19へのシクレソニド使用の根拠として岩渕氏らは、2月19日に行われた厚生労働省の専門家会議で、国立感染症研究所のコロナウイルス研究室により「同薬が強い抗ウイルス作用を有する」との知見が共有されたことを挙げている。MERSコロナウイルス、SARSコロナウイルスから推定される機序としては「シクレソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が重症化しつつある肺傷害を改善させるのではないか」との見解を示している。なお、現時点では同薬以外の吸入ステロイドに同じような作用は認められていないとのことだ。

岩渕氏らは酸素化不良・CT有所見で、本人の同意が得られた3人(73歳女性、78歳男性、67歳女性)にシクレソニドの吸入を開始。3人は全員横浜港で検疫を受けたクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」の乗客だった。

吸入開始から2日目で酸素療法の中止が可能に
症例1は強皮症の合併(無治療経過観察)が疑われたケースで、入院3日目からロピナビル・リトナビル(カレトラ®)を投与し、解熱、酸素化の改善傾向が見られたが、酸素療法が依然必要な容態だった。症例2は80本/日の過去の喫煙歴があった。症例3は発症前から検診で胸部異常陰影を指摘され、CTで経過観察中だった。

3人とも、入院後からCTで両側中下肺野にすりガラス陰影を認めた他、低酸素症で酸素療法を受けるなど呼吸器症状の増悪が認められた。症例1の患者には入院から9日目、症例2と3の患者には入院から4日目に当たる2月20日(専門家会議で岩渕氏らがシクレソニドの知見を得た翌日)に、同薬200μgの1日2回の吸入を開始。3人とも同薬の吸入を開始して2日目から症状の改善が見られ、酸素療法の中止などが可能になったと報告されている。

MERS流行で作成された化合物DBで候補物質に
COVID-19に伴う肺炎に対し、全身ステロイド投与の有効性や安全性の検討は一部で進んでいるが、最近では否定的なコメントも発表されている(Lancet. 2020; 395: 473-475)。岩渕氏らによると「シクレソニドはプロドラッグの吸入薬で薬剤は肺表面にとどまり、血中濃度の増加はわずか」という。そのため、投与時期は、重症化する前の感染早期から中期、または肺炎の初期が望ましいとの考えを示している。同薬は既に未熟児・新生児から高齢者の慢性気道炎症に広く用いられており、安全性の面でも有利とのことだ。

なお、2020年2月25日、査読なしの論文を掲載するプレプリントレポジトリに韓国のグループによる化合物スクリーニングに関する報告が公表されている。この報告では最終的にMERS-CoV感染症あるいはCOVID-19に有望な既存薬として12品目が選択された。12品目にはシクレソニドの他、Ca拮抗薬ベニジピン(商品名コニール)や強心薬ジゴキシン、ニューモシスチス肺炎治療薬アトバコン(商品名サムチレール)、抗がん薬レゴラフェニブ(商品名スチバーガ)などが名を連ねている。

「カレトラ®でも難渋した患者の改善が印象的」
「今回は少数例の報告であり、現時点で同薬の有効性が確立したとは言えない」と岩渕氏ら。しかし、特にロピナビル・リトナビルを投与していた症例1では、「酸素化不良が続き、投与中止に踏み切れない中、さらに高度治療を受けられる病院への転送も難しい状況だった。シクレソニド吸入を開始したところ、急速に快方に向かったことは印象的」と所感を述べている。

岩渕氏らは現時点でのCOVID-19に対する投与手順やポイントを示している他、今後症例を蓄積するための多施設共同観察研究のプロトコールを作成していることを明らかにしている。


この薬が本当にCOVID-19に有効なら素晴らしいと思います。日韓合作の成果になります。厚労省ご推薦のアビガン®よりもはるかに期待できそうです。

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