第2の官制パニック、口蹄疫

第2の官制パニック、口蹄疫

以下は、木村さんの記事からの抜粋です。


口蹄疫(Foot and Mouth disease 以下FMD)に罹った動物は痩せて、商品価値がなくなると言われている。(しかし、)殺処分が行われるようになったのは1940年以降であり、それまではFMDに罹患した家畜は治るまで放置されていた。

1922-24年にイギリスでの流行の際、FMDに罹った牛を介抱し、1923年のRoyal Showでその牛を優勝させたCharles Clover 氏の業績は、罹患した家畜は商品価値が無くならないことを示す、貴重な症例報告である。

以上の事実を鑑みると、何故多量殺処分が必要なのかという疑問がわくが、日本ではこうした議論は全くと言って良いほど起こらない。何故なのかと考えれば、

(1)FMDには殺処分、とインプットされている
(2)FMDの事をよく知らない
(3)殺処分が有効と主張する獣医師、いわゆる専門家、官僚、政治家達に対して、そうでは無いという勇気がでない、などが挙げられるだろう。

日本では「殺す事が最良の方法」以外の意見が報道されないことは、極めて不自然だと感じざるを得ない。

殺処分は、発生のごく初期、バイオテロの可能性も鑑みて行うことは理にかなっていると思われる。しかし、ある程度以上の広がりを見せてからは、殺処分を行うことの方が損失が多くなる。

現在のFMDにおける対応をみていると、感染拡大のための殺処分というよりは、殺処分自体が目的となっている感が否めない。これは、かつてFMDで大被害を被ったイギリスの状況と重ねることができる。もはや、殺処分の有効性の問題ではなく、流れをとめることが出来ないから殺し続けたというのが本当のところであろう。

結果として、イギリスは、殺処分の対象を緩和することし、「明らかに健康だと思われる牛に関しては、殺すか殺さないかは農家の決断にゆだねる」との見解を出したのである。

10年ほど前、多くの犠牲を払い、損失を生んだ英国の事例でこれだけの議論がなされたのにもかかわらず、日本で何の議論も起こらないのは不思議である。「殺す事に意義がある」という流れの中で、冷静な議論などは何処かに吹き飛んでいる状況は、2009年に流行したH1N1豚インフルエンザ騒動を思い起こさせる。

FMDは自然界にごくありふれた病気で自然に回復する。感染経路も複数あり、特効薬や完全な予防法も無い以上、封じ込めは不可能であり、根絶することは不可能である。そうであれば、ウイルスとの共存をも含んだ議論を行うことが緊急に行うべきことであろう。


木村さんは、上の議論に続いて、「『清浄国(FMD free)』という概念は科学的根拠に基づかない」という議論を第2の官制パニック、口蹄疫-(2)でされています。

ところで、以下は7月17日の読売新聞の記事の抜粋です。


種牛殺処分へ、東国原知事「国の対応、最悪」
宮崎県高鍋町で、口蹄疫対策特別措置法に基づく殺処分を拒否していた種牛農家の薦田長久さん(72)が16日、殺処分を受け入れたことを受け、県は17日午前10時から、種牛6頭を処分する。

処分後、18日午前0時に高鍋町を中心にした移動・搬出制限区域や、イベントや外出の自粛を求めた非常事態宣言を解除する見通し。残る宮崎市の制限区域解除は27日午前0時を予定している。

東国原英夫知事は薦田さんとの面会後、「県全体のための英断。心から感謝したい」とした上で、「力及ばず殺処分という結果になり、心からおわびしたい」と薦田さんに陳謝した。国の対応については「最悪。特に農水省の制度や農相にがっかりした。殺処分ありきで、論理が矛盾している」と批判した。

一方、山田農相は閣議後の記者会見で、処分受け入れについて「本当にありがたい。胸を張ってOIE(国際獣疫事務局)に清浄国と言えると思う。ぜひ薦田さんにお会いして感謝申し上げたい」と話した。


感染しているかどうかわからない種牛(恐らくしていない)を殺処分したら、なぜその翌日、非常事態宣言がほぼ自動的に解除されるのでしょう?

山田農相が「胸を張ってOIEに清浄国と言えると思う」というのがとんでもないです。やはり、「第2の官製パニック」かもしれません。

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コメント

  1. もも より:

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    やっぱり、国は間違いだ! と思った。
    どう考えても変だったし… 会社の人達も「おかしい!」と言ってくれてましたもん!
    結局、宮崎潰し だね!!
    私はあの子達を絶対に無駄死にはさせません!
    今日、北海道でBSE?の感染疑いが出たみたいです。
    どうか、2時検査は陰性でありますように! 次は北海道が被害にあいそうで怖い。
    沢山の星になった子達。あなた達は宮崎の宝物です。 絶対に無駄死にはさせません! 約束するからね。 宮崎を見守ってね。
    私は戦うよ!!

  2. もも より:

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    すみません コメントを勝手に出しました。
    申し訳ございません。

  3. tak より:

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    >ももさん
    コメントありがとうございました。ご遠慮なくお願い致します。

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    改めて、今回の事は検証して欲しいですよね。
    犠牲になった子達のためにも。失った尊い命に報いるためにも。
    二度と同じ様な事が無い様に。
    あってはならないけれど…万が一、国内で同じ様な事が起ってしまった時に、今回の様にバタバタの内に、たくさんの命を失ってしまう様な事がない様に。
    政府(農水省)には、宮崎県や知事に責任を被せてるのでなくて、様々な意見に対して聞く耳を持ち検証して欲しいです。

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