以下は、論文要約の抜粋です。
背景
実験的研究によって、キサンチンオキシダーゼ阻害薬は、心筋酸素消費量を減少させることが示唆されていた。このような効果がヒトでも確認できれば、これらの薬物が狭心症患者の心筋虚血に対する新しい治療薬になる可能性がある。研究者らは、高用量のアロプリノールが慢性狭心症患者の運動能力を延長できるかどうかを調べた。
方法
心血管造影により診断が確定している65人の慢性狭心症患者(年齢18-85)に対して、プラセボコントロール、ランダム化、二重盲検臨床試験をおこなった。患者にはアロプリノール(600mg/day)あるいはプラセボが6週間投与された。プライマリー・エンドポイントは、ST低下までの時間とした。セカンダリー・エンドポイントは、全運動時間と胸痛発生までの時間とした。
結果
アロプリノールはST低下までの時間を平均で、232秒から298秒に延長した。一方、プラセボは、249秒に延長した。アロプリノールは、全運動時間を301秒から393秒に、プラセボは307秒に延長した。また、アロプリノールは、胸痛発生までの時間を234秒から304秒に、プラセボは272秒に延長した。顕著な副作用は認められず、狭心症患者にとってアロプリノールは、有用、安価かつ安全な抗虚血薬であると思われる。
メカニズムの詳細は不明ですが、アロプリノールには、心疾患における仕事効率を改善し、同じアウトプットを少ない酸素消費でおこなえるようにする効果があることが知られていました。しかし、これらの情報はすべて実験的研究に限られており、臨床的な知見はなかったそうです。そこで、このような臨床試験が行われたそうです。
アロプリノールは古い薬で、日本でも15種類以上のジェネリックが発売されており、値段も100mg錠で6.1円から29.1円です。論文にも書かれていますが、発展途上国などで、高価な新薬やバイパス手術などが難しい場合には、アロプリノールが選択肢になるかもしれません。
しかし、論文には書かれていませんが、問題もあると思います。アロプリノールには、皮膚粘膜眼症候群(スチーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)という重大な致死性の副作用があります。特に、腎機能が低下している場合は、排泄の低下によりこれらの副作用がおこり易くなります。
高尿酸血症治療の場合、通常200-300mg/dayですので、600mg/dayはかなりの高用量です。300mg/dayでは効果がなかったそうです。論文では、狭心症に用いられる亜硝酸薬やβブロッカーなどの他の薬物と比較しても、血圧や心拍数に対する影響は少なく、副作用は大きな問題ではないと書かれていますが、やはり副作用には配慮する必要があると思います。
参考記事で紹介した、新しい痛風治療薬フェブキソスタット(febuxostat)は、アロプリノールと同じキサンチンオキシダーゼ阻害薬ですが、胆汁排泄が中心ですので、副作用出現の可能性が低いといわれています。フェブキソスタットにも抗心筋虚血作用があるかどうか、知りたいところです。
参考記事
新しい痛風治療薬フェブキソスタット(febuxostat)
「痛風」の原因遺伝子: ABCG2
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