Chimpanzee and human Y chromosomes are remarkably divergent in structure and gene content
以下は、要約の抜粋です。
Y染色体は、何億年も前に常染色体から進化し、性決定機能を獲得し、X染色体との染色体間の組換えがおこらないような変化を重ねてきた。
しかし、これまでに配列が決定されたのはヒトのY染色体だけだったので、Y染色体の進化についてはほとんど不明だった。
我々は、ヒトに最も近い種であるチンパンジーのY 染色体の全塩基配列を解読し、ヒトのY 染色体との比較を行なった。その結果、配列構造も遺伝子の内容も非常に異なっており、過去600万年の間に極めて早く進化したことを示している。
チンパンジーのY染色体には、ヒトと比べて約2倍のパリンドローム配列があるが、共通の祖先から進化する際に、タンパク質をコードする遺伝子のかなりの部分を失ったと思われる。
これらのチンパンジーとヒトとの大きな違いは、以下の4つの相乗的な要因によってドライブされたと考えている:1) 精子生産におけるY染色体の突出した役割、2) 染色体間の組換えがおこらないことによる「遺伝子ヒッチハイク」効果、3) Y染色体内で頻繁におこる異所性相同組換え、4) 性交行動の種差。
Y 染色体上の遺伝子の多くが精子の生産に関与していることの重要性が強調されています。チンパンジーの雌は、1 回の繁殖期に何頭もの雄と交尾することが多く、最も強い精子をもつ雄が子孫を残す可能性が高いそうです。
研究代表者のDavid C. Pageは、「チンパンジーのゲノム配列が明らかになったとき、一般の人は、なぜ人間が言葉を取得し、文章を書くようになったのかがわかるだろうと考えました。でも、最も劇的な違いの1 つは、精子の生産だったのです」と言っています。
NHKのテレビで「女と男~最新科学が読み解く性~第3回 男が消える?人類も消える?」をみて、「男をつくるY染色体は滅びつつある」ということと、「ヒトの場合、Y染色体を運ぶ精子の劣化も著しい」ことが印象に残りました。
その中で、チンパンジーの精子はヒトのものよりも圧倒的に数が多く、運動性も高いことが紹介され、その理由として、チンパンジーの乱婚性があげられていました。オスとメスは特定の関係というものはなく、メスは発情するとどんどんオスを受け入れます。その結果、強い精子が生き残ったそうです。上記の記事とまったく同じ結論です。
人間の精子が弱く、少なくなったのは、一夫一婦制のためだとされていました。ヒトの場合、チンパンジーとは逆に、進化と共に精子が劣化したのです。
恋に落ちることが人生を滅ぼすことはありますが、恋に落ちることが人類を滅ぼすというのは、想像できませんでした。
チンパンジーとヒトの精子
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