以下は、記事の抜粋です。
アルツハイマー病のマウスに対し、ホモシステイン酸というアミノ酸代謝物を減らすワクチンを作って投与したところ、症状が改善したとの研究結果を長谷川亨・佐賀女子短大教授らの研究グループが1月20日、PloS Oneで発表した。
長谷川教授によると、抗がん剤に使われる貝類のたんぱく質をホモシステイン酸と結合させてワクチンを開発。アルツハイマー病のマウス30匹を円形プールで泳がせて島を探させる実験で、ワクチンを投与しなかった15匹は何度やっても平均1分ほどかかったが、投与した15匹は1日ごとに到着時間が縮まり、4日目には平均20秒余りになった。
同じ実験をアルツハイマー病にかかっていない15匹でも行ったところ、ワクチンを投与した15匹とほぼ同じスピードで到着時間が縮まったという。記憶にかかわる脳の海馬も、ワクチンを投与したマウスの方が投与しないマウスより大きかった。
アルツハイマー病は、βアミロイドというたんぱく質が脳に異常に蓄積することが原因との説が有力だが、長谷川教授は「実験結果は、ホモシステイン酸が主因である可能性を示している」と分析している。
アルツハイマー病(AD)モデルマウスの認知障害と病理学的変化が、ホモシステイン酸(homocysteic acid, HA)に対する抗体で改善するという衝撃的な内容です。
元論文のタイトルは、”Treatment of Alzheimer’s Disease with Anti-Homocysteic Acid Antibody in 3xTg-AD Male Mice”で、PloS Oneのサイトで全文を読むことができます(論文をみる)。
ADモデルマウスとしては、3xTg-ADマウスを用いています。
論文に書かれている結果を以下に要約します。不思議なことに、Abstractにはまったくワクチンのことが書かれていません。
1)3xTg-ADマウスの海馬におけるHA量は、対照マウスのものよりも高かった。
2)3xTg-ADマウスにビタミンB6欠乏食を与えると、脳内HA量が増加した。同時にマウスの脳室内にHA抗体を投与した。その結果、HA抗体は、B6欠乏食によって引き起こされる認知障害と病理学的変化を抑制した。
3)通常食を与えた3xTg-ADマウスにおいても、HA抗体の脳保護効果がみられた。
(以上、Abstractより)
4)HAをハプテン抗原としたワクチンにも抗HA抗体と同様の効果があった。
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