ヒトゲノムの3D構造を解明、米研究者ら
3-D Structure Of Human Genome: Fractal Globule Architecture Packs Two Meters Of DNA Into Each Cell
A new dimension for genome studies
以下は、記事の抜粋です。
1つ1つのヒトの細胞は、膨大なDNAをいかにして詰め込んでいるのか――ヒトゲノムの立体構造を明らかにしたとする米科学者チームの論文が、8日の米科学誌Scienceに発表された。
論文の著者、マサチューセッツ大学医学部のNynke van Berkum研究員によると、「Hi-C」という新しい技術を用いてゲノムを数百万個の断片に切り分け、それぞれのパーツが互いにどの程度近いのかを示す空間地図を作成した。次にコンピューターを用いて、ジグソーパズルを埋めるようにヒトゲノムの3D構造を解明していったという。
もう1人の著者であるハーバード大学のErez Lieberman-Aiden研究員によると、DNAは二重らせん構造だが、1つの細胞内のゲノムはまっすぐのばすと2メートルにも及ぶという。「二重らせん構造が直径100分の1ミリ程度の細胞核にどのように収まっているのかはまだわかっていない。今回のアプローチはその謎に切り込むものだ」
1つ目の重要な発見として、ヒトゲノムが2つの異なるコンパートメントで構成されていることがわかった。遺伝子が間隔をおいて存在し、読まれやすい状態にあるコンパートメントと、使われていないDNAが高密度に濃縮されているコンパートメントがあり、これらは分離している。染色体はヘビのように、これら2つのコンパートメントを行ったり来たりして、そのDNAを活性化したり不活性化したりしている。
さらに、ゲノムが「フラクタル小球(fractal globule)」とよばれる構造を持っていることもわかった。これにより、細胞はその核に、コンピューターチップの3兆倍高い密度で情報を詰め込むことができると同時に、細胞のゲノム読み取りを阻害する「もつれ」や「からみ」ができないようにできる。さらに、このフラクタル構造によって、遺伝子の活性化や抑制、細胞複製の際に、ゲノムの立体構造が自由に開いたり折りたたまれたりできる。
この論文以前、ゲノムは「平衡小球(equilibrium globule)」とよばれる構造だと思われていました。これだと、もつれやすいのが問題でした。下の左側の絵がequilibrium globule、右がfractal globuleです。
研究のカギは、Hi-Cとよばれる方法です。ホルムアルデヒドという薬品を使って、核内の近くにあるDNA鎖同士をリンクさせた後、物理的処理でゲノムを何百万の小断片にバラバラにし、バラバラになった小断片のDNA配列を次々に決定します。ホルムアルデヒドは、近接するDNAを共有結合で架橋するので、小断片の中に共存する配列は、核の中で空間的に近接して存在していたと考えられます。
フラクタルについて、もっと知りたい場合はここ。
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