以下は、記事の抜粋です。
原因不明の強い疲労が続く「慢性疲労症候群」の患者は、マウスの白血病ウイルスに近い「XMRV」に極めて高率で感染していることが、米国立がん研究所などの分析で分かった。10月9日付の米科学誌サイエンスに発表した。同症候群の原因に、ウイルスの過剰増殖による免疫反応の異常があり、研究チームは「XMRV」が関与している可能性が出てきた」と説明している。
血液検査の結果、米国の患者101人のうち68人(67%)でXMRVが陽性反応を示した。健康な人の陽性は218人中8人(3.7%)だけだった。
同症候群は1980年代に米国で確認され、世界に約1700万人の患者がいると推定される。これまでの研究で、さまざまなストレスにさらされ続けると、免疫や神経の働きが乱れて発症することが分かっている。
XMRVとは、xenotropic murine leukemia virus-related virusの略です。xenotropic(異種指向性)とは、マウスからマウスには感染しないが、マウスからヒトなどの異種には感染するという意味です。
上記の記事は、慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome,CFS)の患者の67%がこのウイルスに感染していたというニュースですが、これは非常に高い数字です。これまでにも、前立腺がん患者の4割ががこのウイルスに感染していたという報告がありました。
前立腺がん患者では、以下のように、XMRVなどのレトロウイルス感染を防ぐRNA分解酵素、RNase Lの変異との関係が明らかになっていました。
RNase Lの462番目のアルギニンがグルタミンに変わっている変異RNase L(R462Q)を持った人は、前立腺がんの発症率が高いことがわかっています。R462Q変異でRNase L活性が低下し、XMRVに感染した結果、前立腺がんが発症したのではないかと疑われています。CFSでも、その発症とRNase L活性が低下の関連が報告されていたので、今回のXMRV感染率調査が行われたと考えられます。
多くのCFS患者が、発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹などの微生物感染を疑わせる症状を示すため、CFSと感染症との関連はこれまでも強く疑われていましたが、XMRVの高い感染率は今回初めて明らかにされたようです。
これらの研究は、単純にXMRV感染率と疾患の罹患率を比べただけで、メカニズムについてはまったく触れられていませんが、抗XMRV薬の開発がCFS治療に光明をもたらすことを期待します。
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