2018年の国内医療用医薬品市場

18年の国内医療用薬市場1.7%減 2年連続で市場縮小 IQVIA
以下は、記事の抜粋です。


IQVIAは2月19日、2018年(18年1~12月)の国内医療用医薬品市場が薬価ベースで10兆3374億円、前年比1.7%減だったと発表した。額では前年を約1770億円下回った。

市場別にみると、100床以上の病院市場は4兆5403億円(前年比0.7%増)、99床以下の開業医市場は2兆1155億円(2.3%減)、主に調剤薬局で構成される「薬局その他」市場(以下、薬局市場)は3兆6816億円(4.1%減)――。病院市場は微増ながらもプラス成長に転じたが、開業医市場と薬局市場は3年連続のマイナス成長となった。

薬価改定や後発品の急速な市場浸透が市場縮小の主因となる。その一方で、成長著しいマヴィレットやキイトルーダ、がん免疫療法薬オプジーボは病院市場で使用されることが多く、これが市場別動向に表れたといえそうだ。

■売上1000億円以上に3製品 売上1位のマヴィレット、発売1年でピークアウト

売上上位10製品をみてみる。売上1位は17年11月発売のマヴィレット(グレカプレビル、C型肝炎治療薬)。前年からの伸び率は10倍以上という。ただ、発売から1年でピークアウトした模様だ。同剤は8週投与との使い勝手の良さに加え、あらゆるジェノタイプに使え、難治例にも使えることが特長。多くの患者で根治が期待できることから、市場が縮小局面に入ったと考えられる。

2位は抗がん剤アバスチンで、売上は1175億円(2.9%増)だった。前年順位は1位。3位はオプジーボで、売上は1062億円(6.0%増)だった。同剤の薬価は用法用量変化再算定により、18年4月に23.8%、同年11月に37.5%それぞれ引き下げられた。それでも18年の四半期ごとの売上は、第1四半期が281億円、第2四半期が246億円、第3四半期が254億円、第4四半期が279億円――と、第2四半期を底に右肩上がりに推移した。近年、効能追加した腎細胞がん、頭頸部がん、胃がんなどでの使用拡大が背景にあるようだ。

■キイトルーダ、タケキャブもトップ10入り ジャヌビア、オルメテック、モーラスが圏外に

4位以下は、4位が疼痛薬リリカで売上986億円(前年比5.9%増、前年4位)、5位が抗潰瘍薬ネキシウムで売上916億円(10.2%減、前年2位)、6位がキイトルーダ、7位が自己免疫疾患用薬レミケードで売上757億円(8.6%減、前年5位)、8位が抗凝固薬イグザレルトで売上731億円(2.2%増、前年6位)、9位が降圧剤アジルバで売上694億円(7.1%増、前年10位)、10位が抗潰瘍薬タケキャブで売上681億円(24.6%増、前年10位圏外)――だった。

一方、前年7位の糖尿病薬ジャヌビア、前年8位の降圧剤オルメテック(第一三共分)、前年9位の消炎鎮痛貼付剤モーラスが10位圏外となった。

■抗腫瘍薬の市場規模、1兆2000億円台に

薬効領域別の市場規模トップ10を見てみる。17年に薬効領域として初めて1兆円を突破した抗腫瘍薬市場は引き続き成長し、18年の市場規模は1兆2001億円(9.6%増)だった。薬効内トップはアバスチン、2位はオプジーボ、3位はキイトルーダで、そろって増収。加えて、16年5月発売の分子標的薬タグリッソも42.7%増、薬効内6位となり、これらが同市場をけん引した。

2位は糖尿病薬市場で、売上は5493億円(0.2%減、前年2位)だった。DPP-4阻害薬ジャヌビアは7.9%の減収となる一方で、DPP-4阻害薬とビグアナイド薬との配合薬エクメットは20.5%増、GLP-1受容体作動薬トルリシティは52.2%増、SGLT2阻害薬ジャディアンスは55.2%増となった。

3位は抗血栓症薬市場で、売上は4280億円(2.2%減、前年4位)。薬効内トップのイグザレルトの増収に加え、2位に順位を上げたリクシアナは51%の大幅増となるなどしたが、プラビックス、オパルモン、プレタールの2ケタ減収をカバーできなかった。

4位は免疫抑制薬市場で、売上は3894億円(5.5%増、前年5位)。薬効内トップのレミケードは減収だったが、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラが売上げを伸ばした。

■降圧剤、脂質調整剤市場でマイナス成長続く

5位はレニン‐アンジオテンシン系作用薬市場で、売上は3511億円(23.9%減、前年3位)。市場の大幅縮小は、降圧剤オルメテックなど主要製品が相次ぎ特許切れし、後発品に置き換わったため。薬効内トップ製品は、これまでのオルメテックから今回、アジルバに交代した。

6位は制酸剤。薬効内2位のタケキャブは2ケタ成長した。しかし、トップのネキシウムは18年度薬価改定で特例拡大再算定による16%強の薬価引下げを受けて2ケタ減収となり、加えて多くの製品に後発品が参入しているため、市場全体もマイナス成長となった。

7位は全身性抗ウイルス薬市場で売上は3460億円(2.1%増、前年9位)。薬効内トップのマヴィレットは急成長し、18年3月発売の抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザも売上を伸ばしたが、C型肝炎薬ハーボニーは63%減、ソバルディは90%減となった。

8位は眼科用剤で売上3429億円(1.0%増、前年8位)。薬効内トップの加齢黄斑変性症治療薬アイリーアや同ルセンティスが堅調に売上を伸ばした。

9位は脂質調整剤及び動脈硬化用剤で売上3129億円(16.1%減、前年7位)。後発品が参入した脂質異常症薬クレストールの大幅減がマイナス成長の理由となる。同市場は3年連続で前年を下回っている。

10位は「その他の中枢神経系用剤」で売上3079億円(0.2%減、前年10位)。薬効内トップ製品は認知症薬メマリーとなっている。

■企業別売上ランク 1位が武田、2位が第一三共で変わらず 3位はファイザー

企業別の売上ランキング上位20社を見てみる。「販売会社」ベースでは、売上1位は武田薬品(6934億円、2.0%減)、2位は第一三共(6548億円、2.1%減)だった。前年と順位は変わらない。

3位は前年4位のファイザー(5020億円、4.5%増)。前年3位だったアステラス製薬は今回、売上4871億円、前年比11.6%の2ケタ減収で、4位に後退した。17年6月に後発品が参入した降圧剤ミカルディスの減収影響が大きかったとみられる。

アッヴィとヤンセンの2社が今回、ランキング上位20位に初めてランクインした企業になる。一方で、前年16位だった大日本住友製薬、前年17位だったアストラゼネカは今回、20位圏外となった。


2018年の売上1位は17年11月発売のマヴィレット(グレカプレビル、C型肝炎治療薬)ですが、記事にも書かれているように、薬が効きすぎてC型肝炎が根治するため、使用のピークは終わってしまい、今後はどんどん下位に落ちて行くと思われます。

個々の薬よりも薬効領域別の市場規模というのが興味深いと思います。1位の抗腫瘍薬が1兆2000億円とダントツで、さらに伸びる勢いなのに対して、2位の糖尿病薬は5493億円で減少傾向、3位の抗血栓症薬市場も4280億円で減少傾向です。過去の花形だった降圧剤や脂質調整剤は、患者数の圧倒的多さにもかかわらず、後発薬の参入のためにこれからも売り上げはドンドン落ちて行くでしょう。

こうしてみると、市場の伸びを支えているのは、バカ高い抗体医薬や分子標的薬ばかりです。小分子の分子標的薬の場合は、そのうち後発薬が参入してきますし、抗体医薬についてもバイオシミラーが登場してきます。

上の記事からも明らかなように、「新薬を次々出して儲ける」というビジネスモデルは、既に崩れています。人口減少が予想される日本などの先進国では、ヒトの寿命が生物学的限界に近くなっているのですから、「医療産業」は国家財政悪化の影響をモロに受ける斜陽産業です。

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