PSA検診は前立腺癌死亡を減らさない
PSA検診は前立腺癌死亡を減らす
上の2つの記事は、日経メディカル オンラインの「海外論文ピックアップ」に載ったものです。
New England Journal of Medicine (NEJM) 2009年3月26日号に、PSA値を指標とする前立腺癌スクリーニング(検診)は前立腺癌による死亡を減らさないとする米国の研究結果(論文を見る)と、前立腺癌死亡の相対リスクは検診群で20%低いとする欧州での研究結果(論文を見る)が同時に掲載されました。
NEJMは、両方の研究結果を慎重に評価しています。その上で、「PSA検診の恩恵はリスクよりも大きいか?」という疑問を投げかけて、読者の意見を問うています(日本語、原文を見る)。
PSAはProstate Specific Antigen(前立腺特異抗原)の略で、前立腺から分泌されるセリンプロテアーゼです。PSAは、前立腺から精漿中に分泌されますが、前立腺に癌や炎症などの疾患があると血液中にもPSAが浸出します。
このように、PSAは前立腺癌の腫瘍マーカーで、その値が高くなるほど癌の可能性は高くなります。しかし、以下のような事実があります。
他の原因で死亡した日本人男性の前立腺を調べると、70歳以上で2~3割、80歳以上で3~4割に前立腺癌が発生しており、高齢者に発生する前立腺がんの25%から半数程度は、寿命に影響を及ぼさないと考えられている。
つまり、高齢者の場合、PSA検査が高値を示しても、バイオプシー(生検)やその後の治療を積極的に行う意味がない症例がかなり存在することになります。それにもかかわらず、現状ではPSA検診で高値を示した患者には生検が指示され、生検で癌細胞が陽性であれば治療が行われます。
このような状況に対する警告として、NEJMに論文が掲載され、「PSA検診の恩恵はリスクよりも大きいか?」という問いかけが行われたと思われます。
日本泌尿器科学会会長の公文氏は、これらの論文について、「米国の研究は、科学的に価値がない。欧州の研究は、世界の前立腺癌研究で最も重要なエビデンスである。PSAを用いた前立腺癌検診は重要である」という内容のプレス発表をしたそうです(コメントの内容を見る)。大丈夫かな?
PSA検査の前立腺癌における診断的価値は高いが、それを検診として行っても寿命に反映しないという結果が面白いと思います。私自身の経験では、ネガティブな結果が正しいことがほとんどです。
コメント
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>他の原因で死亡した日本人男性の前立腺を調べると、70歳以上で2~3割、80歳以上で3~4割に前立腺癌が発生しており、高齢者に発生する前立腺がんの25%から半数程度は、寿命に影響を及ぼさないと考えられている。
つい最近私の身内にも前立腺癌が見つかって
多少困惑していた所がありました。
発病した身内は高齢者であるのですが
まさにこのような事実があるとは知らず
もう少し治療法など主治医に聞いてみたいと
考えさせられました。